運送業における倒産・事業再生の特徴

(1) 事業の特性

トラック輸送業(正確には、「貨物自動車運送事業」といいます。参照:貨物自動車運送事業法2条1項)とは、他者の需要に応じて、自動車を使用し有償で貨物を運送する事業のことを指します。

この事業の特性として設備投資が必要であるという特徴があります。

というのも、自動車等の運搬具や建物、あるいは付属設備など、自社が保有する固定資産を用いてサービスを提供するビジネスモデルであるからです。そういった点では、収益構造は宿泊業等に近いとも言えます。

よって、トラック等1台につきどれだけの収益を上げられるかが肝心で、その管理を正確に行わなくてはなりません。

また、勤務地・勤務場所が多様であり、通常の労務管理とは全く異なる管理方法を要求されます。

労働時間などに関する規制は他の業界と変わりありませんが、告示によってドライバーの拘束時間が制限されています。

よって、ルールに誠実に対応するほどコストが高くなってしまい、その結果としていわゆる「一人親方」という特殊な雇用関係が発生するケースが増えています。

(2)窮境の原因

上記特性で述べたような労務管理をはじめ管理が中小企業では十分に対応できず車両ごとの採算管理等の「管理体制不備」により体力を奪われていくことに対する社内認識が薄く、気づけば資金繰りに窮していますが一生懸命に業務に対応している状況になることが多いです。

また、このような管理不十分な状況のもと燃料の高騰やトラックの更新投資等の資金負担に対応できず窮境に陥ることが多々あります。

(3)倒産における特徴

設備として倉庫(賃貸も含め)の原状回復処理、トラックの自社所有であれば処分、リース品であれば返品等、この処理(リース品の処理を含めて)問題となります。

特に、倉庫などの面積が大きい賃借物件がある場合には明け渡し費用として高額な原状回復費がかかることがあり、裁判所への予納金の積み増しも含めて撤回コストを計上する必要があります。

(4)事業再生における特徴

トラック輸送業においては、特徴のところでふれたように原価管理、収益管理が特に重要です。

特に管理コストをかけられない中小企業においては如何に少人数で集計ソフト等を利用して効率よく管理できるかが前提問題です。

前提問題をクリアしたうえでトップラインの改善については、トラック運送業においては競合他社との差別化が困難であることから運送事業での改善は容易ではありません。

そのため、運送業に付加する価値をどれだけ提供できるかがカギとなります。一般的に倉庫収入を付加したり、流通加工、検品等、運送以外の付加価値を提供することで差別化を果たし在庫管理などを一括請負することで高い収益を確保することが可能です。

(5)事業再生における問題点

事業の特徴で述べたように労務管理が困難であるため、未払い残業代や退職金引当等がネックとなることがあります。

このようなリスクのためにも管理コストをかけてでも労務管理、収益管理をせざるを得ない状況です。

また、運送業における2024年問題が目前に迫っており、労務管理は否応なしに進めざるを得ない状況にあります。

※運送業における2024年問題については、こちらの記事をご覧ください。

(6)利用できる補助金

運送業で活用できる助成金とは、下記の2つが考えられます。

・時間外労働等改善助成金 時間外労働上限設定コース

このコースは、出退勤管理のソフトウェアの導入や更新、専門家による業務の効率化の指導を受ける、生産工程の一部自動化、省力化等に取り組み、成果目標を達成した事業者に対して、その経費を助成するものです。

・IT導入補助金

こちらの助成金は、生産性向上に資するITツールを導入するための事業費等の経費の一部を補助するものです。

ITツールの例としては、車両管理システムなどが考えられます。

申請については、IT導入支援事業者がサポートいたします。

(7)弊社で同業種の倒産事業再生事例 

No.60 破産申立 ⇒ 一部事業譲渡して破産申立てした事例

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