ナフサ不足の影響で倒産急増?企業が資金繰りに悩んだ場合の対処法

2026年現在、中東情勢を発端とした世界情勢の変動により石油化学製品などに広く利用されている「ナフサ」の供給が先行き不透明な状況です。すでに大手企業がパッケージを変更するなど、一般消費者にもわかるような変化が広がっています。

 

こうした「ナフサショック」はプラスチック・合成繊維・塗料・合成ゴムといった現代社会を支えるほぼすべての化学製品に影響しており、原料を利用する中小企業にも深刻な影響を与えています。倒産急増も予想されるなかで、本記事ではナフサ不足の現状と、中小企業の資金繰りが悪化した際の対処法を解説します。

 

2026年ナフサショックで倒産急増が予想されている理由

 

ナフサショックの直接的な引き金となったのは、2026年2月のホルムズ海峡封鎖が発端です。中東エリアでのナフサ輸送に依存していた日本国内でも製造業を中心に影響が発生しています。本章では2026年のナフサショックによる倒産急増が予想される背景について詳細を解説します。

 

ナフサ調達の難航により中小企業に打撃

 

2026年4月に帝国データバンクが公表したデータによると、原油高騰・供給不安について企業の9割超がマイナスの影響を受けると回答しており、半年間この状況が続けば43.8%が「事業縮小」を迫られるとされます。

 

製造業に限っては、影響が3か月未満でも22.8%が「限界」と回答しており、体力の乏しい中小企業への打撃の深刻さが際立っています。

 

参考URL   帝国データバンク 中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響アンケート

 

原油高なども深刻な影響を与えている

 

ナフサ不足の問題は、ナフサ単体に留まりません。原油価格の高騰も同時進行しており、燃料費や輸送コスト・電力費なども連鎖的に上昇しています。さらに、コロナ禍の支援融資(ゼロゼロ融資)の返済や長期化する円安、深刻な人手不足、そして物価高という複合的な経営圧迫要因を抱える中小企業も少なくありません。

 

 

 

ナフサ不足の影響が予想される業種

 

ナフサの不足は、日常生活への影響はまだ小さいもののすでに製造業を中心に影響がみられています。今後も不足が継続した場合に、影響が予想される業種は以下のとおりです。

 

化学・石油・石炭関連企業

 

ナフサショックで直接的な打撃を受けているのが、化学・石油・石炭関連の企業群です。2026年3月には三菱ケミカルグループ・出光興産・三井化学・旭化成などが相次いでエチレン設備の減産を発表し、国内6か所の半数以上に相当する拠点が減産体制に入りました。

石油化学工業協会によると、3月のエチレン生産設備の稼働率は68.6%、生産量は前年同月比で約4割減少しています。こうした大手企業の減産が川下に位置する中小企業にも打撃を与えており、原料の入手自体が困難になるという前例のない事態です。

 

参考URL  石油化学工業協会 2026年3月の生産・出荷実績に関する石油化学工業協会コメント

 

ゴムを扱う企業

 

合成ゴムはナフサを出発点に製造されるため、自動車部品・工業用シール・ホース・タイヤなどを製造するゴム関連企業も深刻な影響を受けています。特に自動車メーカーや機械メーカーへの部品供給を担う下請け企業は、大手からの価格据え置き要求と原料高の板挟みに遭いやすく、利益を削り続けた末に資金繰りが悪化するリスクが高い業種です。

 

紙・パルプ等の製造企業

 

紙・パルプ業界は、塗工紙の製造に使用する薬品・コーティング剤・フィルムがナフサ由来である場合が多く、原料調達リスクに直面する中小企業も少なくありません。

 

印刷業界にも影響が及んでおり、印刷インキ・ラミネートフィルム・PP/PE梱包材はいずれもナフサ由来のため紙媒体の製作もコスト高騰の影響を受けています。既存の印刷コスト上昇に急激な原料高が加わり暗い影を落としている状況です。

 

建設・塗装関連企業

 

ナフサは塗料や溶剤(シンナー)の原料などにも使用されており、建設会社・塗装業者・防水工事業者にも深刻な影響が発生しています。接着剤・シーリング材など建設副資材も軒並み高騰しており、受注済みの工事で当初見込んでいた利益が消え、赤字工事を抱え込むリスクが高まっています。

 

もしも資金がショートした場合の対処法

 

ナフサショックによる資金繰りの悪化によって、「今月の支払いが厳しい」という状況に陥いることも珍しくありません。そこで、本章では資金がショートした場合の対処法についてわかりやすく解説します。

 

支払いを繰延べする

 

支払いに困っている場合、仕入先・外注先・家賃・リース会社など、各種支払いの繰り延べ(猶予)交渉を検討します。取引先との信頼関係を維持しながら誠実に事情を説明し、支払い期日の延期や分割払いの合意を得ることで、当面のキャッシュフローを確保できる可能性があります。

 

ただし、取引先にとっても痛手となるため、早期かつ誠実な連絡と、できる限り具体的な返済見通しを示すことが大切です。

 

融資を受ける

 

資金不足を補うための融資として、以下の公的支援制度の活用も検討できます。

 

① セーフティネット保証5号(または4号)の活用

中小企業信用保険法に基づく「セーフティネット保証制度」は、業況が悪化している特定の業種の中小企業に対して、通常の保証枠とは別枠で信用保証協会の保証を受けられる制度です。ナフサ関連の業種が認定対象となった場合、5号認定(売上高等の減少)を受けることで、低利融資を受けやすくなります。

 

② 日本政策金融公庫の「セーフティネット貸付」

日本政策金融公庫は、社会的・経済的環境の変化の影響を受けている中小企業を対象に「セーフティネット貸付」を実施しています。原油価格の高騰・原材料の供給不足といった外部要因により経営が悪化している場合も対象です。

 

③ 自治体(都道府県・市区町村)の「制度融資」

各都道府県・市区町村では、地域の中小企業向けに独自の「制度融資」を設けています。金利補助や信用保証料の補助が上乗せされる場合も多く、銀行の融資よりも低コストで借り入れができる傾向があります。

 

ファクタリングを利用する

 

売掛債権を早期に現金化する「ファクタリング」も、資金調達の方法として考えられます。銀行融資と短期間で完結し、売掛先の信用力に基づくため、自社の財務状況が悪化していても利用できる場合があります。ただし、ファクタリングは闇金業者も潜んでいるなどデメリットも大きい手法のため注意が必要です。

法人経営にファクタリングは有効?利用や破産時の注意点を解説

 

私的整理を検討する

 

資金繰りの改善が見込めない場合は「私的整理」を検討する段階です。私的整理とは、裁判所を介さずに、主要な債権者(金融機関など)との間で合意に基づき債務を整理する手続きです。

代表的なスキームとして、「中小企業活性化協議会」(旧・中小企業再生支援協議会)や「事業再生ADR」の活用が挙げられます。

 

法的整理を検討する

 

事業の継続価値がなく、整然と会社を終わらせることを選択する場合は「法人破産」を検討します。裁判所が選任した破産管財人が財産を換価・処分し、債権者に配当する手続きです。

 

代表者が個人保証をしている場合は、法人の破産とあわせて個人破産も検討する必要がありますが「経営者保証ガイドライン」に基づき、一定の条件を満たせば経営者が個人財産を過度に失わずに済む手続きもあります。

 

私的整理と法的整理の違いとは

 

不透明な国際情勢の中でナフサショックによる影響に中小企業が深刻な経営状況に陥った場合、私的整理もしくは法的整理によって問題を解決する方法が検討できます。本章では私的整理と法的整理の違いについて解説します。

 

私的整理

 

私的整理とは、裁判所を介さずに債権者(主に金融機関)との任意の交渉によって債務を整理する手続きです。官報への掲載がないため、取引先や顧客に手続きが知られにくいというメリットがあります。中小企業活性化協議会や事業再生ADRなどの枠組みを活用することが一般的です。一方で、債務超過の場合は利用しにくいなどのデメリットもあるため注意が必要です。

 

法的整理

 

法的整理は、裁判所の関与のもとで行う公的な債務整理手続きで、主に以下の3種類があります。

 

  • 法人破産は、事業継続が困難な場合に会社を清算する手続きです。裁判所が選任した破産管財人が財産を換価・配当し、完了後は法人格が消滅します。
  • 民事再生は、事業を継続しながら債務を圧縮する再建型の手続きで、債権者の多数決により再生計画が認可されます。

 

  • 特別清算は、解散した株式会社が清算困難な場合に裁判所の監督下で行う手続きで、破産より簡易的に進められるケースもあります。

 

法的整理は強制力を持つ一方、私的整理よりも周囲に知られやすいなどの注意点もあります。

 

ナフサショックに悩んでいる場合の相談先

 

不透明な国際情勢の中でナフサショックによる影響に中小企業が直面したら、どこに相談できるでしょうか。そこで、本章では知っておきたい主な相談先を紹介します。

 

メインバンクなどの金融機関

 

資金繰りに不安を感じた段階で、まずメインバンクに相談しましょう。返済猶予(リスケジュール)や追加融資の可否を交渉します。

 

政府系金融機関(日本政策金融公庫・商工組合中央金庫など)では、原油高騰・ナフサ不足を理由とした相談窓口を設けているケースがあります。また、信用保証協会は金融機関と連携して融資の保証をサポートしており、保証付き融資の条件緩和なども相談可能です。

 

よろず支援拠点

 

国が全国に設置している「よろず支援拠点」は、中小企業・小規模事業者の経営相談を何度でも無料で受け付ける総合支援機関です。財務・資金繰り・販路開拓・人材など幅広い相談に対応しており、専門家(中小企業診断士・税理士・弁護士など)を紹介してもらえることもあります。

 

取引かけこみ寺

 

ナフサショックによる影響で下請け企業が不当な取引条件(値下げ強要・支払い遅延など)を押しつけられている場合は、「取引かけこみ寺」(中小企業庁の委託事業)に相談可能です。ナフサショックに乗じた不当な価格据え置き要求などに対して、無料で法的なアドバイスを受けられます。

 

商工会議所・中小企業活性化協議会

 

「商工会議所」は、地域の中小企業が気軽に相談できる身近な支援機関です。制度融資の案内・補助金の紹介・専門家のあっせんなどを行っています。

 

「中小企業活性化協議会」は事業再生支援を専門的に行う機関であり、私的整理の入口として非常に有効な相談先です。各都道府県に設置されているため、まず最寄りの協議会に連絡してみましょう。

 

弁護士

 

資金繰りに悩んだら、できる限り早い段階で弁護士に相談しましょう。弁護士は、融資交渉・私的整理・民事再生・法人破産などに対応できます。法的な観点からアドバイスを提供し、経営者の立場に立って最善の解決策を探ることが可能です。

また、経営者保証の問題・取引先・従業員への未払い・税金の滞納など、複合的な問題が絡み合う場面では、弁護士のサポートが不可欠です。

 

まとめ

 

2026年のナフサショックは一時的な原料高騰を超え、日本の製造業を揺るがす事態となっています。情勢は常に変動しているため改善の可能性もありますが、すでに資金繰りの悪化に直面している場合は早急に対策を講じることが大切です。

何から対応していいかわからない、という場合でも、まずは弁護士に相談しましょう。弁護士は企業の経営状況に合わせて、適切な対策をアドバイス可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。

 

この記事の監修者

弁護士法人i 代表弁護士

黒田 充宏

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