「赤字の会社は売却できる?方法や法的整理のヒントを解説
赤字が続く会社を抱え、「このまま事業を続けるべきか、それとも売却すべきか」と悩む経営者は少なくありません。赤字会社の場合、売却がそもそも可能なのかわからない方も多いでしょう。
結論からいうと、赤字企業であっても売却は十分に可能です。そこで本記事では、赤字会社の売却方法や成功させるための重要なポイント、法的整理のポイントを詳しく解説します。
Contents
赤字の会社は売却できる?売却方法とは
赤字の会社であっても、売却ができないわけではありません。現在の経営状況を把握し、売却方法を選択すること実現可能です。本章では主な売却方法として「事業譲渡」「株式譲渡」「会社分割」の3つについてわかりやすく解説します。
事業を譲渡する
事業譲渡とは会社が保有する事業を、一部、もしくはまとめて他社に売却する手法です。
会社そのものではなく「事業」という単位で取引するため、売り手は売却したい事業だけを選んで譲渡できます。また、買い手としても将来性があったり、魅力的な人材が働いている事業を購入できるなどのメリットがあり、売買が成立しやすい方法です。ただし、売却時には現在保有している事業の権利、資産や雇用をどうするのか慎重に協議する必要があります。
不採算事業を切り離して残りの事業に集中しやすくなるメリットがあるほか、一部の優良事業だけを買い手に買い取ってもらい、既存借入金への返済を進めることも検討できます。
株式を譲渡する
株式譲渡とは、会社のオーナー(株主)が保有する株式を売却する方法です。会社そのものが取引対象となり、経営権を移転させます。買い手は資産・負債・契約関係をそのまま引き継ぎ、中小企業のM&Aで最もよく使われる手法です。ただし、2027年以降は株式譲渡所得への課税が強化されるため、タイミングは慎重に決断する必要があるでしょう。
赤字会社の場合でも、将来的な成長性や保有資産、ブランド力、人材などに価値があれば買い手がつくことがあります。ただし、簿外債務や偶発的な負債リスクについては、デューデリジェンス(精査)で明らかにする必要があります。
会社を分割する
会社分割とは、会社の事業の一部または全部を別会社に承継させる方法です。「新設分割」(新しく会社をつくる)と「吸収分割」(既存の会社に吸収させる)の2種類があります。
赤字が特定の事業部門に集中している場合、その部門を分割して切り離すことで、健全な事業を守りながら再建や売却を進めやすくなります。グループ内再編や第三者への売却など多様な活用も可能です。ただし、会社分割は手続きが複雑になりやすく、専門家のサポートが不可欠です。債権者によっては同意しないケースもあります。
赤字会社の売却成功に必要な3つのポイント
赤字会社であっても、適切な準備と戦略があれば売却は十分に可能です。買い手は単なる「現在の利益」だけでなく、「その会社が持つ資産や将来のポテンシャル」を見た上で判断しています。そこで、本章では赤字会社を成功に導くための3つのポイントを解説します。
1.現在の会社の強みを理解する
買い手に「なぜ赤字なのに買うメリットがあるか」を納得させるためには、客観的な分析が不可欠です。主に以下の視点から、現在の会社の強みを理解するところから始めましょう。
- 赤字の要因を分析する
構造的な赤字(市場の縮小、競合の台頭)なのか、一時的なもの(設備投資、販路開拓の失敗)なのかを切り分けます。
- 黒字化の可能性を探る
設備投資の赤字などであれば、一定期間を経ると黒字化する可能性があります。また、コストを見直せば利益が出るなど、具体的な改善案(リストラクチャリング)を提示できるかどうかが重要です。
- 業界の最新動向
業界内での立ち位置を再確認します。たとえ今は赤字でも、特定のニッチな技術や許認可、顧客基盤など買い手企業にとって会社を得るメリットが潜んでいる可能性があります。
2.適切なタイミングで売却する
納得のいく売却を実現するためには、「時間的なゆとり」が重要です。業績が底を打つ前や、経営者様が心身ともに健やかなうちに準備を始めることで、大切な会社を託すにふさわしい相手をじっくりと見極めることができます。
急な判断を迫られる状況を避けることが、会社と従業員の未来を守ることにもつながります。経営が悪化し過ぎた状態では売却ができない可能性もあるため、適切なタイミングを見誤ることなく売却を目指しましょう。
3.積極的にアピールする
買い手候補に「自社の隠れた企業価値」をいかに伝えるかも重要です。例として、自社と相手企業が組み合わさることで、どのような売上拡大が見込めるかを具体的にアピールしていくことも検討できるでしょう。
特殊な技能を持つ社員や、独自の顧客ネットワークは、赤字という数字以上に買い手にとっての大きな魅力です。買い手にとって赤字はポテンシャルに見えることもあります。
赤字会社の売却が難しいケースとは
赤字会社の売却は決して不可能ではありませんが、買い手側が「リスクがリターンを上回る」と判断した場合には、交渉が難航します。そこで、本章ではあらかじめ知っておきたい赤字会社の売却が難しいケースを紹介します。
債務が高額である
会社が抱えている債務が高額の場合、買い手側からは大きなデメリットにみえがちです。売却方法も黒字の事業譲渡に限られる可能性もあります。売却が前進しても金融機関から債務免除や返済条件の変更(リスケジュール)の同意を得る必要があるため注意が必要です。
黒字化が見込めない
買い手にとって赤字会社であっても購入したい理由の1つに、「将来の利益」が上げられます。しかし、業界自体が斜陽産業で、どんなに経営努力をしても回復の余地がない場合、買い手はメリットを感じません。また、会社が抱えている構造的な問題(原価率が高すぎる、固定費が削減不能など)があり、黒字化には多大な課題がある場合も、売却が成立しない可能性が高いでしょう。
会社の魅力が乏しい
赤字経営である点を上回る魅力が乏しい場合、売却は困難になりやすい傾向があります。
どこにでもあるサービスや製品しか扱っていない場合や、特定の取引先に依存しすぎている、あるいは顧客との契約が不安定なケースも買い手側からは不安要素となるため必要です。
簿外債務などのリスクが大きい
帳簿に載っていない「簿外債務」のリスクは、買い手にとって避けたいトラブルです。例として、労務管理がずさんで、将来的に多額の支払いが生じる可能性があるケースでは、訴訟につながるリスクがあるため、買い手としては避けたいものでしょう。
過去の取引先・顧客・従業員とのトラブルなど、帳簿上以外の大きなリスクが未解決の場合、売却交渉が難航化しやすくなります。
また、買収監査(DD)でリスクが見つかると信頼を失い、契約には至らない傾向があります。
経営者への依存度が高い
会社の売却にあたっては、「社長がいなくなると会社が回らない」という経営者への依存度が高いケースでは、デメリットと見なされる傾向があります。
長年社長の人脈だけで経営が成立している場合や、社長だけが特殊な技術やノウハウを握っている場合など、長期にわたってワンマン経営が行われている場合も同様です。「買収後に社長が引退しても、事業が継続できるか」を厳しくチェックされます。
会社が売却できなかったらどうする?
赤字の会社を売却したくてもうまくいかない場合、M&A仲介会社などに依頼しても買い手を探すことも考えられます。しかし、売却のめどがつかず赤字が拡大するリスクもあるため、売却以外の方法も検討することが大切です。本章では会社が売却できなかった場合の対処について解説します。
法的な視点から適切に会社を分析する
まず行うべきは、会社の現状を「法的・財務的」な視点で客観的に分析することです。弁護士や税理士に相談しながら分析を進めます。
- 資産と負債を正確に把握する
帳簿上の数字だけでなく、現時点で資産を売却したらいくらになるか(清算価値)、また未払いの残業代や公租公課(税金・社会保険料)がどの程度あるかを精査します。 - 連帯保証の確認
中小企業の場合、経営者個人が会社の債務を連帯保証しているケースがほとんどです。会社をたたんだ際に、個人の資産(自宅など)にどのような影響が及ぶかを、弁護士などの専門家とともにシミュレーションする必要があります。
廃業や清算など会社をたたむことを検討する
売却が難しい、かつ事業の継続による利益が見込めない場合は「廃業(解散・清算)」を選択肢に入れます。資産が負債を上回る(資産超過)状態であれば、自主的な廃業が可能です。解散公告を行い、残った資産で債務を清算し残余財産を株主に分配して完了します。
経営者のタイミングで決断でき、従業員や取引先への影響を最小限に抑えながら、進めることも可能です。
会社を休眠する
「今は売れないが、将来的に再開する可能性がある」「解散手続きの費用が捻出できない」といった場合に「休眠」という選択肢もあります。
税務署や市区町村に「休業届」を提出することで、事業活動を停止します。登記上は会社が存続するため最大で10年赤字を繰り越すことが可能ですが、みなし解散(※)のリスクや税務申告漏れも起きやすくなるため、慎重に判断する必要があります。休眠はあくまで一時的な「凍結」であり、根本的な解決ではない点に留意が必要です。
知っておきたい赤字会社を法的に解決する方法とは
債務超過などで通常清算ができない場合、あるいは事業を継続しながら債務を圧縮したい場合には、法的な手続きが必要です。本章では赤字会社を法的に解決する方法を紹介します。
法人破産
法人破産は裁判所が選任した破産管財人が資産を換価・配分し、手続き完了とともに会社が消滅する清算型の手続きです。経営者が連帯保証人であれば、個人の自己破産と同時申立てが一般的です。法人破産には裁判所への予納金や弁護士費用などを用意する必要があるため、赤字の場合は早めに決断することも重要です。
手続きが完了すれば債務や資金繰りの悩みも終わり、個人破産も完了させることで相続時の債務承継リスクも回避できます。
一方で、従業員解雇や資産の処分もあるため、その他の選択肢と合わせた判断が大切です。
民事再生
民事再生とは、会社を存続させながら再建を目指す手続きです。経営陣が継続して再建を主導できる点が特徴です。再生計画が認可されれば再建の道が拓けますが、その一方で否決のリスクもあります。また、債務免除が受けられた場合でも債務免除課税という税金が発生するほか、高額の予納金を用意する必要もあるため、選択できない会社も少なくありません。
民事再生は担保権の実行や再生計画後も従来の取引先との関係は悪化するなど、法人破産とは異なるリスクが多いため注意が必要です。
特別清算
特別清算とは、債務超過の疑いがある会社などが裁判所の監督を受けながら、財産を破産管財人ではなく会社自らが換価・配当することで会社を清算する方法で、債務がなく会社をたたむ通常清算とは異なります。
法人破産では債権者破産を除き、申立人は会社を破産させたい法人ですが、特別清算の場合は株主・債権者・清算人・監査役が申立人になれます。
社会的ダメージが法人破産よりも低いなどのメリットがあるものの、株主や債権者の同意が必要であるなどの点に注意が必要です。
私的整理を行う
私的整理とは裁判所を介さず、金融機関などの主要債権者との交渉で債務を整理する方法です。以下の2つの方法があります。
①任意交渉による私的整理
債権者と任意で直接交渉を行い、返済等の条件見直しなどを進めます。
②準則型私的整理
事業再生ADRや特定調停など、一定のルールに沿って行う私的整理もあります。
法人破産や特別清算、民事再生は法的整理と呼びます。私的整理は法的整理とは異なり、債権者をピックアップして任意交渉できるなど、自由度が高い整理方法ですが、同意を得られなければ法的整理を検討する必要があります。状況によってどちらを選択するか慎重に判断すべきでしょう。
赤字会社の経営に悩んだら弁護士に相談するべき?
経営者が弁護士に相談するタイミングとして最も多いのは、「資金繰りが限界で、もう手遅れかもしれない」と追い詰められた時点です。しかし、本来のベストタイミングは、事業再生や再建の選択肢がまだ豊富に残っている段階にあります。
早期に弁護士へ相談することで、以下のような多角的なサポートを受けることが可能になります。
- 事業再生に向けた法的スキームの検討
- 債権者との交渉代理
- M&A・事業承継のアドバイス
- 契約の見直しや労務問題
- 法人破産をはじめとする会社をたたむ際のサポート
赤字経営に少しでも不安を感じたら、早めに経営の伴走者として弁護士へ相談を始めましょう。
まとめ
赤字会社であっても、独自の強みや資産があれば売却による事業継続は十分に可能です。手法には事業譲渡や株式譲渡などがありますが、債務超過や黒字化の見込みが立たない場合は、売却以外の選択肢も検討せねばなりません。
廃業、休眠、あるいは破産や民事再生といった法的整理など、状況に応じた適切な出口戦略が求められます。手遅れになる前に弁護士に相談し、早期に法的スキームを検討しましょう。
この記事の監修者

弁護士法人i 代表弁護士
黒田 充宏
法人破産は自己破産と違い、従業員対応や債権者などへの交渉、説得が必要となってきますので、経験豊富な事務所に依頼されることをお勧めします。破産をお考えの方の中には、破産費用が払えないから相談に行くのをためらわれている方もいらっしゃると思いますが、当事務所はこれまでに850件以上もの借金に関するトラブルの事件処理を担当し、会社の倒産・再生の相談や事件処理も100社以上担当してきた経験から、手元に現金がなくても、住宅や車を売却することによって、破産費用を充足した例がたくさんあります。
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