仮想通貨がある場合の破産はどうなる?注意点や知っておきたい対処法を解説
仮想通貨(暗号資産)取引で大きな損失を抱え、返済のめどが立たなくなってしまったら、一体どのように対処すべきでしょうか。ビットコインやイーサリアムなど人気の仮想通貨が多い近年、取引の損失による自己破産を検討する方も一定数見られています。しかし仮想通貨が絡む自己破産には、通常の借金整理とは異なるポイントがあるため注意が必要です。そこで本記事では、仮想通貨を保有・取引していた人が自己破産する際に押さえておきたい注意点や対処法を解説します。
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仮想通貨を所有している場合の自己破産
仮想通貨の値動きは非常に激しく、短期間で資産が数倍になることもあれば、逆に大きく目減りすることもあります。こうした値動きの結果、借金を重ねて債務超過に陥るケースは珍しくありません。本章では仮想通貨を所有している場合の自己破産手続きについて解説します。
仮想通貨(暗号資産)が原因で債務超過となっている場合
仮想通貨が原因で債務超過となっている場合、自己破産をはじめとする債務整理を検討できます。しかし、一般的な預貯金や株式などの資産とは異なり、仮想通貨は特殊な仕組みを持つ資産です。特に以下の2点に注意しましょう。
・自己破産時に価値が上昇し、自己破産が中止となる可能性がある
自己破産の手続き中に保有している仮想通貨の価格が急騰し、その評価額によっては資産超過とみなされ、破産手続きそのものが中止となる可能性があります。手続きが進行中でも相場変動によって状況が変わりうる点は、他の財産にはない仮想通貨特有のリスクといえます。
・仮想通貨やFXなどの取引は免責不許可事由となるおそれがある
自己破産は借金を免除してもらう「免責」を裁判所から得ることが最終目的ですが、破産法では「浪費又は賭博その他の射幸行為(破産法252条1項4号)」による著しい財産減少・債務負担は免責不許可事由とされています。投機性が高い仮想通貨取引による損失は、この射幸行為に該当すると判断される可能性があり、免責が認められないリスクがある点にも注意が必要です。
裁量免責となり自己破産できる可能性はある
免責不許可事由に該当する場合でも、必ず免責が下りないわけではありません。裁判所が諸般の事情を考慮し、免責を許可することが相当と認めた場合には「裁量免責」が認められています。
裁量免責の判断では、次のような事情が考慮される傾向にあります。
- 取引に至った経緯や動機に酌むべき点があるか
- 自己破産の手続きに誠実に協力しているか
- 反省の態度が見られるか
仮想通貨取引で借金を作った場合でも、裁判所や破産管財人の調査に誠実に対応することで、裁量免責が認められる可能性は十分にあります。
仮想通貨取引時に発生した滞納税金の取り扱いとは
仮想通貨の売却益には所得税(雑所得)が課されますが、含み益の状態から急落して納税資金が確保できず、税金を滞納してしまうケースもあります。
税金は自己破産をしても免責の対象にはならない「非免責債権」のため、自己破産によって借金は免責となっても、滞納した税金の支払い義務は残ります。滞納税がある場合は、自己破産手続き時に弁護士に相談したり、税務署や自治体への分割納付の相談も並行して進めることが望ましいでしょう。
仮想通貨は自由財産に含まれるのか
自己破産をしても、生活に最低限必要な財産は「自由財産」として手元に残すことが認められています。詳細は以下です。
- 99万円以下の現金
- 差押禁止財産(衣服・寝具・家具・給料など)
- 裁判所が自由財産として拡張を認めた財産
- 破産管財人が財団から放棄した財産
一方、仮想通貨は原則として自由財産には該当しません。取引所の口座残高やウォレット内の仮想通貨は、時価に換算して評価される財産権の一種とみなされ、破産財団に組み入れられて換価・配当の対象となるのが基本的な考え方です。
ただし評価額がごく少額である場合など、裁判所の裁量によって自由財産の拡張が認められる可能性はあります。
仮想通貨詐欺に遭って自己破産する場合はどうする?
「必ず儲かる」といった甘い言葉で勧誘され、仮想通貨詐欺に遭って借金を負ってしまったという相談も増えています。自らの投機的判断による損失とは異なり、詐欺被害によって生じた債務は、免責不許可事由の判断において考慮される可能性はあります。
ただし、詐欺被害であることを主張するには、契約時のやり取りや振込記録、勧誘時の資料など、被害を裏付ける証拠が重要になります。詐欺被害に遭った場合は、自己破産の検討と並行して、警察への相談や消費生活センターへの通報、加害者への損害賠償請求の可能性についても弁護士に相談することが大切です。
仮想通貨を取引していた人の自己破産時の注意点
仮想通貨はその性質上、自己破産時にはその他の財産と分けて、慎重に扱う必要があります。本章ではあらかじめ知っておきたい、自己破産時の注意点についてわかりやすく解説します。
自己破産依頼後は仮想通貨の取引はストップする
弁護士に自己破産の依頼をした時点(受任通知の送付以降)は、原則として仮想通貨の売買や送金などの取引を止める必要があります。手続き開始後にも取引を続ける行為は財産の隠匿や投機をやめられないという印象を与え、免責不許可事由となるおそれがあります。
申立代理人や破産管財人に仮想通貨の所有を申告する
保有している仮想通貨は、弁護士への依頼時に少額の価値であったとしても必ず申立代理人(弁護士)や破産管財人に申告しなければなりません。取引所名やウォレットアドレス、保有数量、取得時期などの情報を整理し、正確に開示しましょう。
仮想通貨は現金や預金と異なり外部から発見されにくいと考えて申告を怠る(隠す)ケースがありますが、取引所の履歴や銀行口座の入出金記録などから発覚することは珍しくありません。財産を隠していたことが判明すると、免責不許可事由に該当するおそれがあります。また、免責許可後に財産隠しが発覚すると詐欺破産罪に問われる可能性もあるため、絶対にやめましょう。
破産管財人に指示に従い免責許可を目指す
管財事件となった場合、破産管財人は保有する仮想通貨を調査し、換価(売却)した上で債権者への配当に充てます。申立人は管財人からの資料提出や説明の求めに誠実に応じ、指示に従って手続きを進めることが、スムーズな免責許可につながります。
個人事業主や経営者が仮想通貨取引に失敗したらどうする?
事業資金を仮想通貨に投じて損失を出してしまった個人事業主や経営者の場合、個人の自己破産だけでなく、事業の整理方法についても検討が必要です。
法人の代表者であれば「法人破産と個人破産の同時手続き」、個人事業主であれば「事業の廃業と個人の債務整理」を並行して進めるケースを検討します。
特に事業資金や融資で得た資金を暗号資産(仮想通貨)の投資・トレードに転用して失ってしまった場合、債務の理由や金額の規模に応じた適切な債務整理手続きを選択することが早期再起の鍵となります。詳しくは以下です。
個人が破産する場合の手続きとは
仮想通貨取引などで膨らんだ個人の借金を整理する方法には、主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つがあります。現在の収支状況や資産の残高、借金の理由(免責不許可事由に該当するかどうか)によって最適な手続きが異なります。
- 任意整理(裁判所を通さない交渉)
弁護士や司法書士が債権者(金融機関やカード会社など)と直接交渉し、将来利息のカットや返済期間の延長(3〜5年程度)などを求める手続きです。官報には掲載されず、特定の債務だけを選んで整理できます。(事業用の融資や保証人付きの借入れを除外することが可能)一定の事業収入や給料収入があり、元金さえ減額・繰り延べできれば3〜5年で完済できる見込みがある場合は任意整理を検討できるでしょう。ただし仮想通貨による損失額が大きすぎると、返済プランが立たず任意整理では解決できないことがあります。
- 個人再生(裁判所を通じて借金を大幅減額)
裁判所に再生計画案を提出し、借金の総額を原則5分の1程度(※最低弁済額の規定あり)に大幅に圧縮してもらい、原則3年で分割返済する手続きです。マイホームを残せる「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用できる可能性があります。事業・給与による継続的な収入があり、減額後の借金を継続して返済できる見込みがある場合に検討できるでしょう。ただし、仮想通貨取引によって得た利益や残りの暗号資産も評価額に換算され、返済額(計画弁済総額)に影響を与える(清算価値保証の原則)ため、試算が必要です。
- 自己破産(裁判所を通じて借金を免責する)
保有する一定の資産を清算して債権者に配当する代わりに、残りの借金すべての支払義務を免除(免責)してもらう手続きです。収入がなく返済の目処が立たない場合や、借金が高額で任意整理・個人再生ができない場合に検討します。
代表者が会社の借入れの連帯保証人になっている場合の影響
代表者が会社の借入れ(金融機関からの融資や買掛金など)の「連帯保証人」になっている場合、代表者個人が自己破産をすると、会社経営および代表者自身に大きな影響が及びます。
- 会社(法人)への影響
① 主債務(会社の借金)自体は消滅しない
代表者個人が自己破産しても、免責されるのは「連帯保証人としての個人の返済義務」のみです。会社が負っている主債務そのものは消滅せず、会社は引き続き債権者に対して返済義務を負い続けます。
② 一括弁済(期限の利益の喪失)を求められる可能性がある
金融機関との融資契約(銀行取引約定書など)には、多くの場合「保証人について破産手続開始の申立てなどの事由が生じたときは、期限の利益を喪失する」旨の条項が盛り込まれています。主債務者自身が破産の申立てをした場合は、金融機関からの請求を待たずに当然に期限の利益を失う「当然喪失事由」とされているのが一般的ですが、保証人について破産等の事由が生じた場合は、金融機関の「請求」があって初めて期限の利益を失う「請求喪失事由」として規定されていることも多いでしょう。
代表者の自己破産という事実を把握した金融機関が、この請求権を行使して会社に一括返済を求めてくるケースは少なくないため、一括弁済を求められるリスクが高くなります。
③ 会社の継続が難しくなり、連鎖して「法人破産」となるケースが多い
主債務を一括弁済できる資金力が会社にない場合、金融機関から売掛金や預金口座を差し押さえられるなどして資金繰りが破綻し、会社自体も同時に破産手続き(法人破産)を進めざるを得なくなるのが一般的です。
代表者個人が破産する場合の注意点
会社法330条により、会社と取締役の関係は委任に関する規定に従うとされています。そして民法653条2号では「委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと」が委任の終了事由として定められているため、代表者が破産手続開始の決定(申立ての時点ではなく、裁判所が開始決定を出した時点)を受けると、会社との委任関係が終了し、取締役の地位を失うことになります。
ただし、法的には破産手続開始決定を受けたこと自体は取締役の欠格要件に該当しないため、自己破産後であっても改めて株主総会の決議などにより取締役に選任することは可能です。。
会社の私的整理を検討する
私的整理とは、裁判所を介さず債権者と直接交渉し、返済条件の変更や債務の一部免除を図る方法です。
代表的な手法には、返済負担を軽くするリスケジュールや、中小企業活性化協議会による調整支援、経済産業大臣認証の第三者機関が仲介する事業再生ADR、簡易裁判所を利用する特定調停、地域経済活性化支援機構(REVIC)による出資・債権買取りなどがあります。
私的整理は手続きが迅速で対外的信用への影響を抑えやすい一方、全債権者の同意が必要なため、債権者数が多い場合や意見対立があると合意形成がおそれがあります。
会社の法的整理を検討する
私的整理での解決が難しい場合は、裁判所を利用する法的整理を検討します。法的整理には、事業継続を前提とする「再建型」(民事再生・会社更生)と、会社を清算する「清算型」(法人破産・特別清算)があります。使途不明金が多く再建が困難な場合は、破産による清算も選択肢です。破産手続きでは破産管財人が財産や資金の流れを調査するため、使途不明金も厳しくチェックされます。
仮想通貨がある自己破産時によくある質問
仮想通貨を所有していて自己破産手続きに臨む場合、不安を感じる方は多いでしょう。自己破産は準備をしっかりと行う必要がありますが、弁護士とともに準備を進めることでスムーズに免責許可まで進むケースも決して少なくありません。そこで、本章では仮想通貨がある場合の自己破産について、よくある質問にお答えします。
仮想通貨取引が借金となるケースを教えてください
仮想通貨に関連して借金を抱える主なパターンには、次のようなものがあります。
- レバレッジ取引
証拠金の何倍もの金額で取引できるレバレッジ取引は、価格が予想と逆に動いた場合の損失も大きくなり、証拠金以上の負債(追証・借金)を負うリスクがあります。 - 借金をして仮想通貨取引をした
カードローンや消費者金融からの借入金を投資資金に充て、それが損失となって返済不能に陥るケースです。
- 高額の税金が発生した
利益確定時には含み益があっても、その後の暴落によって納税資金を確保できず、税金の支払いのために借金を重ねてしまうケースもあります。
自己破産すると仮想通貨は差押えられますか
仮想通貨は財産的価値のあるものとして、理論上は差押え・換価の対象になります。しかし、ウォレットキーの管理方法や取引所を通さない個人間ウォレットでの保有など、実務上は所在の把握や強制的な換価が難しいケースも少なくありません。だからといって申告義務がなくなるわけではなく、保有状況は正直に開示する必要があります。
自己破産は家族に知られますか?
自己破産をした事実は、原則として第三者に知られるものではありません。官報には氏名や住所が掲載されますが、一般の人が日常的に官報を目にすることはほとんどないため、そこから家族や職場に知られる可能性は低いといえます。
ただし、同居する家族名義の預金や資産状況について申告を求められるため、家族の協力を得る必要は高いでしょう。管財事件で自宅に管財人の調査が入る場合には、同居家族に事情を知られる可能性はさらに高くなります。
まとめ
仮想通貨がある場合の自己破産は、免責不許可事由のリスクや自由財産の扱いなど、通常の借金整理にはない特有の論点が数多く存在します。特に取引所やウォレットの申告漏れは財産隠しとみなされ、詐欺破産罪に問われる重大なリスクにもつながりかねません。
仮想通貨の借金でお困りの方は、自己破産や会社の再生・清算に詳しい弁護士へ早めに相談し、状況に応じた最適な解決方法を早めに検討しましょう。
この記事の監修者

弁護士法人i 代表弁護士
黒田 充宏
法人破産は自己破産と違い、従業員対応や債権者などへの交渉、説得が必要となってきますので、経験豊富な事務所に依頼されることをお勧めします。破産をお考えの方の中には、破産費用が払えないから相談に行くのをためらわれている方もいらっしゃると思いますが、当事務所はこれまでに850件以上もの借金に関するトラブルの事件処理を担当し、会社の倒産・再生の相談や事件処理も100社以上担当してきた経験から、手元に現金がなくても、住宅や車を売却することによって、破産費用を充足した例がたくさんあります。
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