人手不足で中小企業の倒産が激増!背景と対策を徹底解説
多くの企業にとって人材確保は解決しなければいけない大きな問題です。実際、近年では人手不足による倒産は決して珍しいことではありません。では、どのように対策していけばいいのでしょうか?
今回は、人手不足で中小企業の倒産が増え続けている背景と対策について詳しく解説します。本記事を読めば、人手不足の現状や人手不足による中小企業の倒産が増えている理由、倒産を防ぐための具体的な対策が分かるので、人手不足で悩まれている方や、未来を見据えた対策をご検討中の方は、ぜひご一読ください。
Contents
中小企業における人手不足倒産の現状
2025年1月から10月における人手不足倒産の件数は323件で、前年同期比30.7%増加となり過去最多であることが、株式会社帝国データバンクの調査で分かりました。去年は292件だったため2か月を残した状態で昨年を超えたことになるのです。この事実からも分かる通り、人手不足による倒産は加速しています。また、更に増加することが危惧されている点も見逃せません。
中でも、注視しておきたいポイントが倒産企業の内訳です。実は、人手不足による倒産件数のうち約6割(202件)が資本金1千万円未満の中小企業になります。背景には、大手企業と中小企業の賃金格差が広がったことが関係していると考えられています。
近年、日本経済の景気は回復しているといわれていますが、中小企業の経営者の多くはいまだに景気回復を実感できていません。そのため、大手企業ほどの賃上げを実施できていないのが現状です。このような背景があるため、労働者はより良い環境を求めることとなり人材流出が起こり、新たな人材確保も難しくなっています。
また、どうにか賃上げを実施した中小企業の中には、コスト増加により資金繰りが悪化して経営を続けることが難しくなるケースがあるため、問題は更に深刻なものとなっているのです。
人手不足で会社が倒産する理由
人手不足による中小企業の倒産が増加していると一括りにしても、その背景にはさまざまな要因が存在します。
ここからは、人手不足で会社が倒産する理由について詳しく見ていきましょう。
人件費増加による資金繰り悪化
人手不足を解消する方法の1つに賃上げがあります。特に、物価の高騰が続く昨今では賃上げ圧力が高まっているので、賃上げを実施する中小企業は少なくありません。しかし、売上増加に見合う人件費増加でなければ経営が苦しくなるのも事実です。実際、人手不足を解消するために賃上げを実施して倒産する企業は増加傾向にあります。これが人手不足による倒産が発生している理由の1つです。
営業努力を続けても、実際に売上が増えるまでにはある程度の時間がかかります。このタイムラグを乗り越えることができない企業は少なくありません。賃上げを実施する際には、この点を考慮しておく必要があります。
従業員の退職
現場で大きな役割を果たす従業員が退職すると、残された従業員が自分にかかる負荷を予想して、連鎖的な退職が発生することがあります。このような事態が発生すると、残された従業員に大きな負担がかかります。その結果、無理な残業を強いられることや、精神的に追い詰められるケースが発生するので注意しなければいけません。
これは、長年勤めたベテラン社員が退職する際にも同様の現象が起こる可能性があります。ただでさえ、充分な人手を確保できていない状況で退職者が続出すると、現状の仕事を遂行することも難しくなるため、ベテラン社員が多く存在する場合は注意しなければいけません。
また、人手不足が続くことでサービスの質が低下する危険性もあります。質の高いサービスを提供できなければ、顧客が遠のき売上減少に繋がる危険性もあるのです。この点にも注意しなければいけません。
従業員が退職することで、人手がますます足りなくなり、事業の継続が困難になることも人手不足が招く倒産の1つのケースになることを覚えておきましょう。
求人に応募してもらえない
人手不足を解消するには、新たな人材を確保しなければいけません。この時、最も効果的とされているのが求人を出すことです。しかし、求人を出しても応募してもらえないケースも珍しくありません。
現在、多くの中小企業は人手不足に悩まされています。そのため、新たな人材を確保するために、初任給を上げたり待遇を改善したりしたうえで求人を出しているのです。このような状況にも関わらず、これまでと同じ条件で求人を出しても応募者は限られてしまいます。
求人に応募してもらえなければ、人手不足を解消することはできません。この状況が続けば続くほど、現在の社員にかかる負担は増えていき、場合によっては現在の社員が退職してしまうケースも考えられます。このような最悪の事態を避けるためには、求人をだす前に応募してもらえる求人になっているのかを確認する必要があるのです。
社会的な人手不足が起こっている現在の労働市場は売り手市場です。この点を理解したうえで求人を出さなければ、望む結果を得ることは難しいといえるでしょう。
求人情報をだすまえには、状況に合わせて内容を更新していく必要があることを忘れないでください。
人手不足の主な理由
多くの中小企業で、人手不足が発生しています。では、この理由はどこにあるのでしょうか?
ここからは、人手不足の主な理由について解説していきます。
少子高齢化
多くの方が実感しているように、現在の日本はこれまでにないほどの少子高齢化社会に突入しています。企業にとって戦力となる現役世代の割合が減少していることで、人材確保という競争が激化しているのです。もちろん、これは中小企業だけでなく大企業も同じです。そのため、資金力で劣る中小企業はますます人手不足に悩まされることになります。
人手不足の原因は、現在の日本が抱える「少子高齢化」という社会問題が関係しているのです。
多様化した働き方
一昔前であれば、企業に就職して定年まで勤めあげることが1つの代表的なモデルとされてきました。しかし、これは1つの企業に勤め続けることができると誰もが信じていた時代だからこそ、通用したモデルといえます。一方、近年では1つの企業に勤め続けることがリスクになると認識する労働者も少なくありません。実際、スキルアップをしながら転職先を探す労働者は多く存在します。
また、インターネットの普及によりフリーランスという働き方が浸透してきたことで、企業に就職するのではなく、フリーランスの道を選ぶ人も増えてきました。これも人手不足が加速する1つの理由です。
働き方が多様化したことで、就職以外の道を選ぶ人が増えたことも、人手不足が起こっている理由の1つになります。
求人情報の変化
企業が成長していくには、人材が欠かせません。そのため、多くの企業が人材確保に積極的に取り組んでいるのです。この時、資金力がある企業であれば初任給を上げるなどして、労働者にとって魅力的な条件を提示することができます。
実際、大手企業がだす求人情報は労働者にとって魅力的なものとなり始めています。このような状態にも関わらず、これまでと同じ条件の求人をだしても求職者の目に留まる可能性が低いといえるでしょう。
求人をだしても応募者がいないと嘆く経営者の中には、現在の主な求人情報を確認できていないケースも少なくありません。多くの企業が人材確保に力を入れているという点からも、他社の状況を把握しておくことは非常に重要です。そのため、求人をだす前には現在の市場がどのような状況になっているのかを理解するために、他社の条件を確認しておく必要があります。
前章でも触れた通り、現在の労働市場は売り手市場です。有効求人倍率は1.30倍前後という数値を示しています。より良い求人をだすことができなければ、人材確保は難しいことを覚えておきましょう。
ただし、ここで注意しておきたいポイントがあります。それが、必ずしも給料面だけにこだわる必要はないということです。もちろん、労働者にとって給料は大きな魅力になります。しかし、そこだけで判断するわけではありません。この点を理解しておけば、人材確保の糸口が見えてくるはずです。
労働者にとって、魅力的な条件とは何か?どのような企業で働きたいと思っているのかを考えていくことで、魅力的な求人内容を考えていきましょう。
中小企業が人手不足倒産を防ぐ具体的な対策
多くの中小企業が人手不足倒産に陥っています。では、どうすれば人手不足を防ぐことができるのでしょうか?
ここからは、中小企業が人手不足倒産を防ぐ具体的な対策について見ていきましょう。
生産性の向上
人手不足と聞くと、多くの方は新たな人材を迎えることが唯一の解決策と考えるかもしれません。しかし、生産性を向上させることで環境を整備することは可能です。生産性が向上すれば、少ない人数でも効率よく業務をこなすことができます。
では、どのような取り組みが必要になるのでしょうか?
アプローチとしては2つの方法が存在します。
1つ目の方法がITの導入です。ITの活用と聞くと、現在の業務にどのような形で活かすことができるのか分からないという方も少なくありません。このような場合は、IT活用に強い企業に相談するのも1つの方法です。もちろん、費用はかかりますが、現在ではIT導入の際に活用できる補助金などがあるので、これらを活用することで少ない投資で改善を目指せるケースもあります。
なお、IT活用に強い企業に相談する際には、目的を明確に伝えるようにしてください。目的を明確にしておくことで、適切なアドバイスを受けることができるからです。
2つ目の方法は、IT導入と比べるとアナログに感じるかもしれませんが、既存の業務フローの見直しです。中には、これまで何度も見直しを行ってきたので、これ以上、改善できないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そこで止まってしまうと改善することができないので、これまでと違う形で見直しを行うことが大切です。
もし、経営陣だけで業務フローの見直しを行っていたのであれば、現場で働く人員と共に話し合う必要があります。なぜなら、経営陣と現場で働く人が見ている景色には違いがあるからです。そのため、双方の意見をすり合わせていくことで、思いもよらない発見に繋がることもあります。
また、社内だけで業務フローの見直しを行っていたのであれば、顧客からの問い合わせや要望をヒアリングすることも重要です。顧客の問い合わせや要望を理解していくうちに、省ける工程が見つかることもあります。省ける工程が見つかれば、それだけ作業時間や労力を軽減することが可能です。ポイントは、自社都合にならないことです。自社都合で工程を省いてしまうと、質の低下につながることもあるので、業務フローの見直しを行う際はその点に注意してください。
他には、熟練社員の経験を社内で共有しておくことで、一人一人の技術力を上げることもできます。また、作業マニュアルを動画化しておくと、業務に必要な情報にアクセスしやすくなるため作業の効率化を目指すことが可能です。
社員一同で取り組んでいくことで、連帯感と責任感を持つことに繋がるメリットもあるので、業務フローを見直す際には一人でも多くの社員に加わってもらうことを検討しましょう。
求人情報の見直し
中小企業の人手不足倒産を防ぐうえで、求人情報の見直しも重要です。この時、大切になるのは初任給を上げることだけが解決策ではないことを理解しておくことです。待遇と聞くと、多くの方は給料をイメージされるでしょう。しかし、応募者は必ずしも給料だけで判断するわけではありません。休日の日数や残業の有無、将来的なキャリアアップなどを見据えたうえで総合的に判断するのです。大切なのは、求職者に魅力的な条件を提示することにあります。
求職者が望む環境や望む待遇を考えたうえで、自社がいまできる対応がどこにあるのかを見つけ、魅力的な求人情報を作成して望む人材の採用を目指しましょう。
研修制度の充実
研修制度を充実させることができれば、社員の成長に繋げることができます。成長を実感できると、充実感を味わうことが可能です。私たちは、多くの時間を仕事に費やします。だからこそ、仕事に対するやりがいや成長を実感できる環境が大切になるのです。
ただし、闇雲に研修を実施すればいいという問題ではありません。なぜなら、強制される研修では主体性を持って取り組むことができないからです。研修の目的は、研修を受けることにあるのではありません。研修は、成長や望む技術習得に繋げるために主体性を持って参加するものです。
では、どうすれば成長や望む技術習得に繋がる研修を実施することができるのでしょうか?1つの方法として有効なのが、既存の従業員の意見を踏まえた研修の実施です。
現場の責任者や若手から現在の状況をヒアリングしたうえで、必要な技術や資格について尋ねてみましょう。自分の意見を踏まえた研修が実施されれば、主体性を持って参加できるだけでなく、今後のキャリアについて考えるきっかけにもなるので、社員の意識を高めながら現場の力を上げることもできます。
労働環境の見直し
労働環境の見直しも大切です。人手不足問題を解決するためには、新たな人材確保が欠かせないという認識は間違いではありません。だからといって、既存の従業員を無視した対応を取ってしまうと、退職される危険性があります。そのため、まずは既存の従業員にとって働きやすい環境を整えておくことが重要になるのです。
勤務体系の見直しや、働きやすい環境整備など取り組める課題は決して少なくありません。人手不足で悩んでいるからこそ、既存の従業員を大切にすることが重要になることを覚えておきましょう。
また、既存の従業員が働きやすいと感じることができれば、多くの人にとって魅力的な企業になることができます。大切なのは、目の前の課題を1つずつクリアしていくことです。
まずは、経営側の視点で考えるのではなく、従業員にとって働きやすい環境とは何か?ということから考えてみましょう。
まとめ
人手不足関連による中小企業の倒産が増加しています。人手不足の原因は、少子高齢化や多様化している働き方、求人情報の変化など、さまざまな要因が関係しているので、簡単に解決できる問題ではありません。しかし、中小企業の倒産が相次いでいる以上、この問題に取り組むことは経営を続けていく上で避けて通ることができないのも事実です。
中小企業ができる具体的な対策には、生産性の向上や求人情報の見直し、研修制度の充実や労働環境の見直しがあります。しかし、大切なのは1つの取り組みで終わらないことです。なぜなら、これからも少子高齢化は進んでいき、働き方もますます多様化していくことが予想されているからです。
経営陣は、どうしても経営者側の視点で物事を考えてしまいますが、従業員がいなくなれば経営を続けていくことはできません。だからこそ、経営者側の視点だけでなく現場で働く従業員側の視点を持ことが重要になるのです。
ITの導入やフリーランスの活用、労働環境の改善を実施することで人手不足問題に取り組み、企業としての魅力を高めると同時に、健全な経営を継続できる力を身につけていきましょう。
この記事の監修者

弁護士法人i 代表弁護士
黒田 充宏
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