民事再生(住宅資金特別条項付き個人再生)を使った方法

民事再生(受託資金特別条項付き個人再生)

 

民事再生とは、債権者の同意を得て、裁判所に再生計画を提出し、その計画に対して認可決定を受けることで、借金の額を適切に調整するというものです。

 

個人再生の中でも、住宅条項と呼ばれるものを利用できれば、家を残しながら借金の返済が可能です。

住宅条項とは、正式名称を住宅資金特別条項、別名を住宅ローン特則といいます。

住宅資金特別条項を簡単に説明すると、住宅ローンについては従来通りに支払いを継続する代わりに自宅の処分を避けられるというものです。

 

これを活用できれば、家を残しながら債務整理を行うことが可能です。

ただし、この方法で債務整理をするには、いくつかの条件があります。

本記事では、

 

◯民事再生(個人再生)とは

◯住宅資金特別条項(住宅ローン特則)付き個人再生とは

◯住宅資金特別条項を活用するための条件とは

 

について解説を行います。

民事再生(個人再生)とは

民事再生とは、資金繰りが上手く行かずに行き詰まった企業が、会社債権者等の利害関係者の同意を得て再生計画を裁判所に提出し、裁判所が認めれば、再生計画に従った債権の減額が可能となるものです。

民事再生自体は法人、個人どちらも利用できる手続きです。が民事再生は手続きが非常に複雑なので、個人の場合は個人再生(民事再生の中の1つの特則)を選ぶことが多いです。

 

個人再生は、民事再生を個人でも利用しやすいように手続きを簡易化したものです。

今回は、会社代表者個人の債務整理について解説したいため、主に個人再生について説明します。

 

個人再生は、自己破産や任意整理と比べて、新しくできた制度なので詳しい内容を知らない方がまだまだ多いです。

簡単に説明すると、借金を再生計画によって定められた金額(借り入れ額によって異なります)にまで減らして、3年(場合によっては5年)かけて返済していくというものです。

 

ちょうど、全ての借金が無くなる自己破産と、利息のカット・過払金分の減額をする任意整理の中間にあたる制度です。

以下に、個人再生、任意整理、自己破産を比較した表を掲載します。

 

  個人再生 自己破産 任意整理
減額 原則1/5に減額(借入額によって異なる) 全て無くなる 利息と過払い金分の減額
手続き期間 6~12ヶ月程度 3~12ヶ月程度 1~3ヶ月程度
会社 知られる可能性低 知られる可能性低 ほとんど知られない
家族 知られる可能性有 知られる可能性有 ほとんど知られない
職業の制限 なし 手続き期間は一部制限有 なし

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)とは

個人再生の最大のメリットとしてよく挙げられるのが、「自宅などの財産を残しながら借金を減額できる」という点です。

 

というのも、個人再生手続きにおいては、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度があるからです。

住宅資金特別条項とは、簡単に説明すると、住宅ローンを今まで通り支払い続ける代わりに自宅の処分を避けられるというものです。

つまり、住宅ローンは今まで通り支払い続け、それ以外の借金は、再生計画により減額した額を支払う方法です。

 

「住宅ローンは今まで通り支払います、その代わり他の借金については減額をお願いします」という姿勢を取れば、住宅に関することだけでなく、全体の債務整理自体も円滑に進めやすくなります。

住宅資金特別条項を活用するための条件

住宅資金特別条項を利用するときには、いくつか注意しておかないとならない点があります。

特に会社代表者の場合、

 

◯住宅に住宅ローン以外の抵当権がついていない

◯保証債務が比較的少額であるか

 

などの条件をクリアしていないと、住宅資金特別条項付き個人再生の利用は事実上難しくなります。

それぞれ詳しく解説します。

住宅ローン以外の抵当権がついているか

自宅に住宅ローン以外の抵当権がついていないかどうか、というのは注意しておかなくてはならない点です。

 

抵当権とは、住宅ローンなどでお金を借りたときに、万が一借りたお金を返済できなくなった場合に、お金を貸している側である銀行が建物や土地を競売して配当する権利のことです。

自宅についている抵当権が、住宅ローンだけであれば住宅資金特別条項付き個人再生を利用する要件です。

しかし、住宅ローン以外の借金の抵当権が自宅についていれば、利用できません。

 

会社代表者の方であれば、自宅に担保余力※があれば、銀行が住宅ローン以外の抵当権をつけているケースがほとんどです。

よって、一般の方よりも住宅資金特別条項の利用が難しくなるのです。

 

※担保余力:担保対象の評価額-今現在担保となっている債権額のこと。例えば、評価額2,000万円の家に1,000万円分の抵当権がついていれば、担保余力は残りの1,000万円となります。

 

保証債務額が比較的少額である

保証債務額が高額すぎると、個人再生での債務整理が難しくなります。

しかし、会社代表者であれば、会社債務の保証人となっているケースが多く、個人と比べて債務額が多額になる傾向にあります。

具体的に言えば、数千万円規模の債務の保証人となっていることが多々あります。

 

あまりに保証債務額が大きすぎると、個人再生そのものが利用できない可能性があります。

個人再生には、5000万円要件と呼ばれるものがあります。

再生手続きを開始する時の債権総額が5,000万円を超えていると、個人再生を利用できないというものです。

(ただし、住宅資金特別条項を利用する場合は、住宅ローンなど住宅資金貸付債権の額は含まれません。)

 

このように、会社代表者が住宅資金特別条項つきの個人再生を利用するためには、

 

◯住宅ローン以外に抵当権がついていない

◯保証債務額が多額でない

◯継続的に収入を得られる定職についている

◯住宅ローンの支払いと再生計画通りの弁済額支払いができる

 

などの条件をクリアしないとならないのです。

実際の解決事例

弊事務所では、実際に会社代表者様の債務整理で住宅資金特別条項付き個人再生を活用した事例がございます。

 

以下、解決事例を紹介致します。

 

<事案>

H社は、サッカーグッズの販売を行う事業を営んでいました。

大口取引先との契約が切れたことで、平成21年ころから売上が大幅に減少するようになり、売れ残った商品をネットオークションに出品するなどして改善を図りましたが、以前の売上には遠く及ばず、債権者への返済などが追いつかなくなったため、当事務所に来られました。

 

<解決に至るまで>

問題は、H社社長の自宅不動産が父親との共有であること、がありました。

会社に関しては、事業を続けても債務の返済をなしうる収益を上げることは困難であると判断し、破産申立てを行うことになりました。破産申立てに必要な書類の収集、事業内容及び倒産に至るまでの事情等の詳細な聴取を行い、特に目立った財産や処分行為など、問題となるような事案もなく、申立後順調に手続きが進みました。

 

しかし、H社社長の自宅に関しては、社長名義での住宅ローンが残っていました。

通常であれば、会社の代表者は会社と同時に破産をすることが多く、その場合、自宅不動産も手放すことになるのがほとんどですが、社長の自宅には、家族と共に、共有者である高齢の父親も同居していたため、社長としては何とか手放したくないと考えていました。

 

そこで、住宅資金特別条項付小規模個人再生の手続きを申し立てることになりました。

社長にはすぐに就職活動してもらい、無事定職に就くことができましたので、そこから弁済予定相当額の積立を行い、弁済履行可能性の実績を作ったうえで個人再生の申立を行いました。

その後順調に手続きが進み裁判所の再生計画の認可を得ることができました。その結果、親子3代で住んでいる自宅不動産を守ることができました。

 

解決事例 No.42 より

債務でお困りなら早めに弁護士に相談を

弊事務所に債務問題でご相談に来られる方の多くは、「自宅をなんとか残せませんか」とおっしゃられます。

しかし、現状として家を残しながらの債務整理は条件が厳しく、なかなか達成することはできません。

保証債務額が高額になりやすい会社代表者様ならなおさらです。

 

しかし、解決する方法が全くのゼロというわけではありません。今回の記事で紹介した民事再生を使う方法や、経営者保証ガイドライン任意整理などを使って家を残しながら借金を返していく方法もございます。

家を残すための債務整理方法に共通する点として、早めのご相談が鍵となる点がございます。

お早めに相談頂ければ、いくつかの選択肢をご提案できる可能性が高まります。

また、反対にご相談が遅くなってしまった場合、破産しかご提案できなくなるかもしれないのです。

 

できるだけはやめのご相談をおすすめいたします。

初回相談料は無料です。下記バナーの連絡先をご参照ください。

 

民事再生以外で家を残しながら債務整理する方法については、以下のリンクをご参照ください。

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