経営者保証ガイドラインを利用して家を残す方法
会社代表者様が家を残しながら債務整理をする方法として、特に有力だと言えるのが「経営者保証ガイドライン(経営者保証GL)」を用いた方法です。
経営者保証ガイドラインとは、日本商工会議所と全国銀行協会が共同で策定したものです。
中小企業であれば、経営者が会社の債務の保証人となることが一般です。
しかし、経営者が保証人になれば、個人に過度な負担をかけることとなります。
経営者保証ガイドラインは、経営者を保証債務から守るために作られました。
弊事務所でも、経営者保証ガイドラインを使って、家を残しながら保証債務の整理を行った事例が多数ございます。
新たな人生を歩みたいが、慣れ親しんだ家だけは守りたいと思っていらっしゃる方に最もおすすめする債務整理方法です。
本記事では、
◯経営者保証GLとは
◯経営者保証GLは債権者・債務者両方にメリットがある
◯家を残しながら債務整理をするときに重要な条件
◯弊事務所での解決事例
についてお伝えします。
Contents
経営者保証ガイドラインとは
経営者保証はリスクが大きい
そもそも、中小企業が金融機関などからお金を借りるときには、経営者やその家族が会社の連帯保証人となることが一般的です。これを、経営者保証と言います。
会社の経営が傾き、受けた融資の返済が滞った場合は、保証人である経営者が持つ土地や建物、保険などの財産を処分して返済しなくてはなりません。
経営者保証は経営者にとって、非常にリスクの大きなものなのです。
これまで、経営者保証があることにより、まだまだ成長できるような有望企業が新たな融資を受けることをためらったり、思い切った事業拡大をためらったりするような傾向がありました。
このような中小企業の成長を阻害する現況を改善するために作られたのが、経営者保証ガイドラインです。
経営者保証ガイドラインの概要
経営者保証ガイドラインは、2013年に日本商工会議所と全国銀行協会が共同で策定したものです。
経営者が多額の保証債務を負担し、主たる債務を返済しようと無理をして事業再生への決断が遅れてしまう事態を避け、破綻により関連企業が連鎖的に破産してしまうことを防ぐためにつくられました。
経営者保証ガイドラインの概要について、中小企業庁ホームページでは、
──────────────
経営者保証に関するガイドラインは、経営者の個人保証について、
(1)法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと
(2)多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の
自由財産99万円に加え、年齢等に応じて約100~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること
(3)保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること
などを定めることにより、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や、
早期事業再生等を応援します。
第三者保証人についても、上記(2)(3)については経営者本人と同様の取扱となります。
───────────────
とあります。
ここで注目していただきたいのは、(2)の項目です。後半に、「『華美でない』自宅に住み続けられることなどを検討すること」と明記されています。
つまり、経営者保証ガイドラインを適用すれば、自宅を残しながら債務整理をできる可能性があるのです。
上記で紹介した経営者保証ガイドラインの説明は、全国銀行協会等が策定した広義の概要です。
狭義の意味では、会社精算の1つの手法です。この手法を使い、弁護士が経営者の方のお手伝いをすることが可能です。
華美でない自宅とは
自宅が華美であるかというのは、非常に曖昧で主観的な評価でしかありません。
よって、結局は債権者にとって経済的な合理性があるかどうかが判断基準となることが多いです。
よく言われるのが、回収見込額の増加額≧早期処分価格 であれば、自宅を残存資産として検討できるというものです。
この条件を簡単に説明すると、
このまま決断が遅れて負債が増大し続けた3年後に破産したときに債権者が回収できるお金が3,000万円であったとします。そして、経営者保証ガイドラインを活用して早期に事業の精算をした場合に回収できるお金が4,000万円であったとします。
経営者保証ガイドラインを利用した場合と破産した場合を比べると、1,000万円も回収できる額が増えています。(回収見込み額の増加額)
この場合、自宅をすぐに売却してお金にした額(早期処分価格)が1000万円以下であれば、債権者は家を売ってお金を回収するより、経営者保証ガイドラインを活用した方が得をすることとなります。
つまり、
経営者保証ガイドラインを使った時に債権者が得をするお金≧家を売った時に債権者が得る経済的合理性
になるのであれば、自宅を残存できる可能性が高まります。
弊事務所の弁護士を代理人として頂ければ、対象となる債権者との協議で適宜必要な情報開示をして金融機関からの同意を得られるよう活動致します。
経営者保証ガイドラインは、債権者・債務者両方にメリットが
経営者保証ガイドラインは、元々は中小企業や経営者個人を守るためにつくられたものです。
しかし、経営者保証ガイドラインを利用することで、債務者である経営者だけでなく債権者である金融機関にもメリットがあります。
よって、適切な情報開示と合理的な解決策を示すことで、金融機関からの同意を得やすいのです。
債権者側のメリットと債務者側のメリットを、それぞれ以下に記載しました。
債権者側のメリット
◯保証債務を免除しても、寄付金課税などが生じない
◯債権放棄をした債権者は、全額分を損金算入できる
◯保証債務の減免をした場合、保証人・対象債権者ともに課税関係は生じない
◯関連会社が連鎖的に倒産することを回避できる
債務者のメリット
◯華美でない自宅等を残せる可能性がある
◯破産法上の自由財産を確保できる
◯一定期間の生計費を確保できる
◯信用情報には登録されない
◯事業関係者への迷惑を最小限に食い止められる
債権者側のメリットを見ると、課税に関するメリットがいくつもあるのがわかります。
債務者側のメリットには、一定の資産を守れることや、関連会社に迷惑をかけずに済むことがあげられます。
このように、経営者保証ガイドラインを活用すれば、お金を貸す側、借りる側両方にメリットがあるのです。
家を残しながら債務整理をするときに重要な要件
経営者保証ガイドラインを活用するには、いくつかの要件をクリアしていないとなりません。
以下に、特に重要な要件を挙げます。(以下の要件がすべてではありません。より詳しく知りたい方は、ぜひ弊事務所にご相談ください。)
◯主たる債務者が中小企業で、保証人が中小企業の経営者である
◯対象債権は原則として金融債権であること
◯経営者保証GLによる方が破産手続きにおける配当よりも多くの回収を得られう見込みがあるなど、
対象債権者にとって経済的な合理性があること
(例:現在の配当率>3年後の配当率)
◯保証人に破産法に定める免責不許可事由※がないこと
※免責不許可自由:自己破産によって借金を無くすことができないケース。浪費やギャンブルによる債務超過や、業務や債務に関する情報を隠蔽することなどが含まれます。
弊事務所で実際に取り扱った事例
弊事務所では、過去に経営者保証ガイドラインを活用して、会社代表者様の家を守りながら債務整理を行った実績がございます。
今回は、その中でも1つの事例の紹介を致します。
<社長の持病もあり早期廃業によりインセンティブ資産として自宅を残した例>
A社(代表者X)は外構工事及び設計請負等を事業としていましたが、設計請負業の人員をヘッドハンティングされて事業収入が急速に悪化。
Xさんは持病の喘息により現場監督業務困難になってきたため、弊事務所に相談されました。
法人Aについては、債務超過のため早々に自己破産申立てを行いました。
Xさんについては、手持ち流動資産500万円及び、1年前妻に贈与した自宅があり、自己破産を選択すると、Xさんの流動資産も自宅も配当に回る恐れがありました。
幸い残存保証債務は金融債務だけでした。
弁護士が経営者保証ガイドラインに従い、現在の配当率と3年後の配当率を金融機関に提示して交渉しました。
金融機関もX社長の流動資産を全額弁済充当することで自宅を残存することに合意しました。
金融機関にとっても、3年後の免責より現在の配当のほうがメリットがあった、かつ、経営者保証ガイドラインによって債務整理することで、保証債務免除額についても損金計上が可能となったからです。
Xさんについても、経営者保証ガイドラインにのっとった債務整理をしたため、信用情報(いわゆるブラックリスト)に載ることもありませんでした。
会社経営者の債務整理は早期にご相談を
会社代表者様の債務整理は早めに専門家にご相談されることをおすすめします。
個人と比べて、経営者様が負担される債務額は高額であるケースが多いです。ご相談が遅くなれば遅くなる程、解決方法が選べず自己破産を選択するしかできなくなります。
法律事務所に相談に来られる方のなかには、「弁護士に相談しても破産しか提案しないくせに」とこぼされる方もいらっしゃいます。
しかし、多くの場合は、破産しか提案できないほどギリギリまで相談されなかったことが原因と言えます。
少しでも不安を感じられたときに相談頂ければ、経営者保証ガイドラインを活用した事業再生や、その他の債務整理方法をご提案可能です。家を売却せずに済む方法も提案できる可能性が高まります。
初回相談料は無料です。また、相談だけして契約はしないという判断をされても構いません。
気になることがあれば、お気軽にご連絡頂ければと思います。
連絡先は以下バナーにございます。
経営者保証ガイドライン以外で、家を残しながら債務整理する方法については、以下のリンクをご参照ください。