会社の廃業(清算、破産、倒産)手続きと費用、タイミングについて解説

廃業3つの手法とは

 

株式会社等の会社の廃業する方法としては、清算、破産、休眠の3つがあります。

清算は、黒字でも後継者がいない等の理由により事業を続けられないために会社を畳む場合。

破産は、債務超過等の理由により赤字経営を続けるより会社を畳んだ方がよいとの判断で会社を倒産する場合。

休眠は、会社の事業を一時的にやめる場合。

に、それぞれ選択される手段です。

会社の解散や倒産との違い、会社の廃業にかかる費用、会社を廃業すべきタイミングについて解説します。

 

Contents

会社の廃業には3つの手法がある

株式会社等の会社の廃業とは、会社の事業を経営者の意思で止めることです。

会社の廃業には主に、

 

・清算

・破産

・休眠

 

の3つの手法があります。以下の画像は、会社の廃業を決めた経営者が3つのうちどれを選ぶべきかを簡単に示したフローチャートです。

廃業時のフローチャート

なんとなく名前は知っていても、実際にどのような手続きをするのかイメージがわかない方が多いかと思います。

この記事では会社の廃業手続きで特に多い、「清算」と「破産」にはどのような手順があるのかを解説します。また、これまでに弊事務所が解決してきた事例もご紹介致します。

 

会社の廃業と解散、清算、破産、休眠の違いとは

株式会社等の会社の解散とは、会社が事業をやめることなので、廃業とほぼ同じ意味になります。

会社法では、会社の解散事由として、次の6つが規定されています(会社法471条)。

 

・定款で定めた存続期間の満了

・定款で定めた解散の事由の発生

・株主総会の決議

・合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)

・破産手続開始の決定

・解散を命ずる裁判

 

株式会社等の清算や破産の手続きが終了すれば、会社は解散・清算することになります。

一方、会社を休眠させただけでは、会社は解散していません。

会社の休眠とは

会社法には休眠会社とは、「株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したものをいう。」と定義されています。

会社が事業をやめた後も解散手続きを行わないまま放置した場合は、休眠会社になります。 休眠会社については法務大臣が官報に公告することにより、みなし解散が行われることもあります(会社法472条)。

会社の倒産とは

株式会社等の会社の倒産には、法律上の倒産と事実上の倒産の二つがあります。

法律上の倒産とは、破産法に基づく破産、会社法に基づく特別清算、民事再生法に基づく民事再生、会社更生法に基づく会社更生等が行われることを意味します。

一方、事実上の倒産は、会社に支払い不能の状態が継続し実際デフォルトしているが法的手続きを取っていない状態をいいます。中小企業の倒産により従業員の賃料が未払いとなった場合、未払賃金立替払制度を利用できることがあります。未払賃金立替払制度を利用するためには、中小企業の事業が停止して再開する見込みがなく、かつ、その中小企業に賃金支払い能力がないことにつき、労働基準監督署長の認定を受けなければなりません。

会社が廃業する3つのタイミング

株式会社等の会社が廃業するケースとしては、事業目的を達成した場合もないわけではありませんが、会社の事業が行き詰ったために廃業するケースが多いです。

会社が廃業するタイミングとしては、次の3つが挙げられます。

 

・会社が債務超過となった場合

・経営者が高齢になり後継者がいない場合

・運転資金が無くなった場合

 

それぞれ確認しましょう。

会社が債務超過となった場合

会社の資産総額よりも債務の総額が超過する状態になった場合です。

会社が債務超過となっても、直ちに廃業につながるわけではありませんが、将来性がある製品やサービス等を開発できなければ、そのまま、債務が膨らみ続けることが多いです。

そのため、会社を廃業する一つのタイミングになります。

経営者が高齢になり後継者がいない場合

中小企業の経営者の高齢化と後継者不足が現在問題になっています。

中小企業の経営者が高齢になって事業を続けられなくなると、事業が黒字でも、後継者がいないために廃業せざるを得ないことがあります。

このような場合は、単に廃業するのではなく、身内以外への事業譲渡やM&A等も選択肢に入ります。

運転資金が無くなった場合

会社を経営するには、事業のための運転資金が必要となります。

会社の経営では、取引先や従業員の給料の支払い等のために、常に一定額の手元資金が必要になりますが、運転資金が底をつき、金融機関からの融資も得られなくなった場合は、廃業せざるを得なくなります。

会社を廃業するメリットとデメリット

会社を早めに廃業することには、メリットとデメリットがあります。それぞれ確認しましょう。

会社を早めに廃業することのメリット

メリットとしては、経営の先行きが怪しくなってきた段階で早めに廃業することにより、取引先や従業員への迷惑や損害を最小限に抑えることができる点や、倒産してしまった場合の破産手続きが必要なくなる点が挙げられます。

何より、見通しの立たない経営に悩まされる日々から解放されることは大きなメリットと言えます。

会社を早めに廃業することのデメリット

デメリットとしては、不動産などの会社の資産を売却しても換金価値が低く、借入金等の債務を弁済しきれない可能性があることが挙げられます。

事業に関わるこれまでの人間関係が途切れてしまいますし、従業員を解雇しなければならない点も大きな痛手でしょう。

また、経営者自身は、自分の会社に価値がないと考えているかもしれませんが、他の会社や起業したい人から見ると、価値があることもあります。特に黒字経営で後継者がいないために廃業するのはもったいないとも言えます。

このような場合は、身内以外の従業員、第三者への事業承継や会社の売却も検討すべきです。

会社の清算手続きと解散

株式会社等の会社の清算手続きとは、会社に残った財産を換金し、処分する手続きのことです。

債務超過になっておらず、資産の方が多い場合に使われます。

清算をする場合、まず会社の事業活動を停止するための「解散手続き」を行います。解散手続きが終わってから、本格的に清算手続きを行うのです。

いわば、解散手続きという下準備をしてから、目標である清算手続きを行うといったイメージです。

会社の解散手続き

解散手続きのフローチャート

株式会社等の会社の清算手続きをする前に、「清算人」という役職を用意しなくてはなりません。一般的には、清算手続きをする会社の取締役が任命されることが多いです。

解散手続きでは、まず株主総会で会社の解散決議を行います。それと同時に清算人の選任も行います。

選ばれた清算人は、

 

・株主への通知

・解散及び清算人登記

・税務署への解散届提出

・債権者に対する公告と催告

 

を行います。

※清算人が職務を怠ると、賠償責任を負うと法律で定められています。清算人は会社の解散手続き、清算人就任登記、清算終了の登記を最後まで行わなくてはなりません。

会社の清算手続き

清算手続きのフローチャート

清算人は、解散手続きに続いて、財産目録・貸借対照表などを作成します。

財産目録とは、現預金や売掛金などの資産、借入金などの負債などをまとめた明細票です。

一方、貸借対照表は会社の資産と負債の概要をまとめたものです。

株主総会で、提出された財産目録・貸借対照表が承認されたら、解散日の翌日から2ヶ月以内に確定申告書を提出します。

その後決算報告書を作成し、承認されたら

 

・清算結了届け

・清算結了登記

・確定申告書の作成、提出

 

を行います。

株主総会の決算報告証人の時点で会社は既に消滅していますが、登記を行うことで社会に会社の消滅を示します。

会社の清算手続きの注意点

株式会社等の会社の清算手続きをする際には、以下の4点に注意してください。

 

・営業行為の制限

・株主総会の特別決議が必要

・従業員対応

・特別清算手続きとなる場合

 

それぞれ確認しましょう。

営業行為の制限

まず、営業行為の制限に関してです。

解散決議がなされたあとは、営業行為ができなくなります。つまり、解散決議をするまでに、これまでの取引先に十分な説明をする必要があります。

「廃業を少しでも早く告知する」「新規の取引先を紹介する」など、取引先が不利にならないような配慮をしておきましょう。

株主総会の特別決議が必要

続いて、株主総会の特別決議が必要である点です。

株主総会の決議は通常は、議決権を有する株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の過半数で足りますが、特別決議の場合は、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数による決議が必要になります。

株主の構成が複雑な場合、すぐに決議できない場合があります。思う通りに清算手続きをすすめられないケースもありますので、十分注意しておきましょう。

従業員対応

従業員対応も非常に重要です。会社がなくなるわけですから、従業員の今後もしっかりと考えていかなくてはなりません。解雇の準備や再就職先の紹介など、できる限り対応していくことが好ましいです。

特別清算手続きとなる場合

通常の清算手続きができず、特別清算手続きの形を取らなくてはならない場合もあります。

特別清算とは、清算の進行に著しく支障をきたす事情がある場合や、債務超過が疑われる場合に行う手続きです。

裁判所の関与の元で手続きを進めていかなくてはなりません。

特別清算手続きについては、次の項で詳しく説明します。

会社の特別清算手続きの流れ

特別清算手続きの流れ

株式会社等の会社の特別清算手続きは、

 

・清算の遂行に著しい支障をきたす事情がある場合

・債務超過の疑いがある場合

 

に取られる手続きです。裁判所が関与するため、手続き進行が難しい状況であってもスムーズに進められます。

特別清算には、和解型と協定型という2つのパターンがあります。

和解型では、各債権者との間に個別に和解契約を締結します。裁判所の許可を得ることがで

きれば、そのまま契約に効力が生じて和解できます。

協定型では、債権者集会を開催して協定案について決議を得なくてはなりません。協定案は、決議参加債権者の過半数かつ総議決権額の3分の2以上の賛成があれば可決されます。

また、特別清算では破産と違って管財人が選ばれません。債権者の協力が得られる可能性があるときは、破産ではなく特別清算を選ぶという手段も取れます。

弊事務所で取り扱った清算手続き事例

ーー事例1ーー

自動車部品関連の事業を営んでいた会社。会社の資産はなく、負債も代表者夫婦からの貸付のみであったため清算手続きを行った。

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ーー事例2ーー

知人からすすめられた儲け話に乗って介護施設を設立したが、予定と異なり早期に会社を清算してたたんだ。

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会社の破産手続き

破産手続きの流れ

株式会社等の会社の破産とは、事業の赤字状態が続いて改善の見込みがなく、そのまま営業を続ければ負債額が増えるだけだろうと判断されたときに取る廃業手続きです。

破産手続きの手順を以下に簡単にまとめました。

弁護士受任通知

金融機関や取引先に、弁護士がついて破産手続きの委任を受けたこと、今後の連絡は法律事務所にしてほしい旨を伝える通知書を送付します。

全ての連絡が法律事務所を通じて行われるため、経営者は債権者からの取り立てや催促に悩まされずに済みます。

財産の保全

破産手続きにおいて、申立をしてから破産開始決定がされるまでには、多少のタイムラグが発生します。その間に法人・会社が資産を処分してしまうと、後ほど債権者に配当するべき分が減ってしまいます。

そのようなことがないように、裁判所は財産の処分禁止の仮処分や、その他必要な保全処分を命ずることができます。

破産申し立て

破産手続開始申立書を弁護士が作成し、裁判所に提出します。

裁判所は提出された書類を確認し、破産管財人(裁判所に指名され、破産する法人の財産を債権者に配当する役職)の候補者を探します。

破産管財人には、地域の弁護士が選ばれることが多いです。

破産開始決定

裁判所は、提出された書類を確認し、1週間前後で破産手続き開始決定をします。この開始決定と同時に破産管財人が選ばれます。

開始決定後は、会社の全ての財産は管財人の管理下に置かれます。

債権者集会

裁判所で債権者集会を行います。第一回の債権者集会は、開始決定から3ヶ月後くらいに行われます。

集会では、破産管財人が、管財業務の状況を報告します。

元経営者が事情の説明をすることはほとんどありません。集会自体も10分程度で終わり、あまり時間を取りません。

配当

破産管財人が財産の換価などの業務を全て終わらせたら、配当手続きを行います。この手続は、全て破産管財人が行います。元経営者がなにかをする必要はありません。

終結

元経営者も破産手続きをしている場合は、配当手続き完了後に免責決定がなされます。免責決定が確定すると、元経営者の債務はなくなります。

破産手続きに関する「よくある質問」

破産手続きに対して、弊事務所に寄せられる「よくある質問」に回答します。なお、会社が破産しても、原則としてその会社の代表取締役や取締役等の役員が個人的に責任を負うことはありません。ただ、経営者保証をしている場合は、個人的な債務の弁済が必要になり、弁済が難しい場合は自己破産等を検討しなければなりません。

Q1 破産手続きをすれば、公民権や戸籍に影響はありますか?

A ありません。これまで通り選挙で投票することができますし、戸籍に破産した事実が記載されることはありません。

Q2 破産をすると就ける職業が制限されますか?

A 破産手続き中は一部の職業に一定の資格制限がかかります。(弁護士・司法書士・行政書士・警備員・生命保険募集人・損害保険代理店など)それ以外の職業は、破産手続き中でも継続して働き続けることができます。さらに、資格制限にかかったとしても、破産手続きが完了したあとは解除され、復職が可能です。

Q3 家族への影響はありますか?

A 家族が連帯保証人になっているなど特別な場合を除いて、影響はありません。就職などで、破産した人が家族にいるからと不利になることもありません。

Q4 破産したあとに、もう一度事業を始めることはできますか?

A できます。ただし、一定期間借入ができなくなることに注意してください。(詳細はQ5に記載)

Q5 信用情報機関に登録がされると聞きましたが?

A はい。一度破産すると、信用情報機関にそのことが登録され、10年間データが残ります。そのため、破産後10年間は借入が困難になったり、クレジットカードの新規発行が難しくなったりします。ただし、破産の場合、ほとんどの方が既に返済滞納状態になっており、破産前から事故情報が登録されていることが多いです。どうしてもクレジットカードが必要な場合、配偶者の家族カードを利用することなどは可能です。

Q6 破産すると官報に記載されると聞きましたが?

A はい。記載されます。官報とは、国が発行する機関紙です。破産をすると、破産した人の名前や住所が記載されます。しかし、官報を日常的に読んでいる人はとても少ないです。さらに細かい文字で何人もの名前が並んでいるため、破産した本人でも自分の名前を探すのが難しいほどです。官報に記載されたからと言って、そこから情報が拡散される可能性は極めて低いと言えます。

会社の破産をするには費用がかかる

株式会社等の会社の破産をする上で、注意していきたいのが「破産することにもお金がかかる」点です。

破産手続きで必要となる費用として、

 

・裁判所に破産手続きの申し立てをする際の申立手数料と予納金

・弁護士に依頼する場合は、弁護士費用

・従業員への賃金の支払い

 

などがあります。

裁判所に破産手続きの申し立てをする際の申立手数料

裁判所に破産手続きの申し立てをする際の申立手数料は、申立印紙代、官報公告予納金、予納郵券、債権者宛封筒などで、数万円程度かかります。

裁判所への予納金

裁判所に破産手続きの申し立てをするときは、「予納金」の支払いも必要になります。これは、破産管財人に選ばれた弁護士への報酬の原資となるものです。予納金の額は会社の負債額に応じて異なります。

 

・負債総額が5,000万円未満の場合は、70万円

・負債総額が5,000万円以上1億円未満の場合は、100万円

 

といった金額になります。

弁護士費用

破産手続の申立てや手続を進める弁護士への報酬は、別途依頼者が用意する必要があります。弁護士事務所の規模により、30万円〜50万円といった金額がかかります。つまり、弁護士に依頼して、法人の破産手続きを行うにしてもトータルで、最低、100万円ほどの費用が必要になります。

従業員への賃金の支払い

急に会社を廃業することになり、従業員を解雇するにあたって予告期間を設けられない場合は、解雇予告手当てを支払う必要があります。また、従業員の未払い給与がある場合は、それも用意しなくてはなりません。すぐに用意するのが難しい場合は、未払賃金立替払制度というものがあります。これを使えば、未払い給与の8割を上限に支払いを立て替えてもらうことができます。未払賃金立替払制度を利用するのであれば、従業員の解雇や退職から6ヶ月以内に裁判所へ破産手続開始等の申立を行う必要があります。

破産する費用が捻出できない場合は?

破産する費用が捻出できない場合でも、あきらめて放置するのではなく、弁護士に相談することが大切です。弁護士に依頼すれば、会社の決算書や財産状況を確認した上で、破産に必要な費用の捻出が可能かどうか、検討することができます。また、破産に必要な費用の資金調達方法やタイミングなどについてアドバイスを受けられることもあります。二進も三進もいかなくなってから相談するよりも、早い段階で、相談して、会社の廃業に向けて計画的に手続きを進めていくのが理想と言えます。

早めに弁護士にご相談ください

弊事務所では、多くの法人破産案件を取り扱っております。

弊事務所に破産の相談に来られる方の多くは、事業がにっちもさっちもいかなくなり、かなり思いつめた状態です。

どうしようもなくなった最後の砦として、弁護士を頼られる方がとても多いのです。

しかし、実は弁護士は最後の砦としての機能だけでなく、会社再生のための手段としての機能も持ち合わせています。

早い段階でご相談頂ければ、廃業以外の手段をご提案することもできます。

もちろん、廃業を決意された場合にもご活用いただけます。

どちらにせよ、経営難によって事業主様が苦しまれる前に、早めにご相談頂ければと思います。

初回相談料は無料です。お気軽にご連絡ください。

 

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