コロナ禍における給付金を受け取るまでのつなぎ資金

新型コロナ対策給付金を受け取るまでのつなぎ資金

各種給付金は申請から受給までに期間があく

現在、たくさんの新型コロナウイルス対策制度がありますが、その多くに共通して言えるのが、「受給までに時間がかかる」ということです。


例を上げると、


持続化給付金:2週間程度

雇用調整助成金:1ヶ月程度

特別家賃支援給付金:3週間~1ヶ月


となります。


しかも、これは申請内容に不備がなかった場合にかかる期間です。申請内容に誤りがあったり、受給資格の有無が正しく確認できない場合などは、受給までさらに時間がかかります。申請から1ヶ月以上経ったのに着金していないというネットの声も多く見かけます。


資金繰りに困っている企業様であれば、給付金を受け取るまでに必要資金が付きてしまう可能性があります。


そこで重要なのが、給付金を受け取るまでのつなぎ資金です。


この記事では、手元のお金が尽きる前に少しでもお金を集め、経営資金にあてる方法についてお話します。

今回説明するのは、


○生命保険の契約者貸付制度

○小規模企業共済の特例緊急経営安定貸付金


の2つです。

生命保険の契約者貸付制度

生命保険の契約者貸付制度とは、解約返戻金(契約者が保険を解約したときに払い戻されるお金)を担保に、一定の融資を受けられる制度です。即日でお金を受け取れるなどのメリットがあります。


この制度は、保険を契約している本人のみ利用可能です。


例えば、夫が契約者で、被保険者が妻、保険金受取人が息子であったとします。この場合、契約者貸付制度を利用できるのは夫だけです。


被保険者や保険金受取人は利用できません。よって、契約者以外の人間に勝手に貸付制度を利用されることもないのです。


契約者貸付制度のメリット・デメリット、注意点について解説します。

契約者貸付制度の2つのメリット

生命保険の貸付制度とは、メリットとして


○生命保険を解約せずに、そのまま利用し続けられる

○入金までの期間が短い


などがあげられます。


まず、契約者貸付制度を利用しても生命保険が解約されることはありません。今まで通りの内容で契約が継続します。

生命保険は、加入時の年齢や健康状態によって保険料が決まります。一度解約してしまうと、保険料が高くなったり、今までと同じ内容の保険に加入できなくなる可能性があります。


しかし、契約者貸付制度であれば、保険契約を維持したまま融資を受けられます。一時的に経営難をしのぐためのお金を調達する方法としては、非常にメリットがあると考えられます。



続いて、入金までの期間が短いのも、契約者貸付制度のメリットです。保険会社によっては、即日で入金されるところもあります。


基本的には、ネット申請であれば入金までの期間が短くなり、申込書類など紙ベースでの申請であれば時間がかかる傾向にあります。

いくつかの保険会社のホームページを確認しましたが、ネット申請であれば即日か翌営業日の入金、郵送での申請であれば3~4営業日かかるところが多かったです。


具体例をあげると、

住友生命
(ネット取引の場合)
平日
(8:00~14:30)
平日
(14:31~23:45)
土日祝
着金日 当日中 翌営業日 翌営業日



日本生命
(ネット取引の場合)
平日
(8:00~14:30)
平日
(14:31~23:45)
土曜
(8:00~23:45)
日曜・祝日
(8:00~20:00)
着金日 当日 翌営業日 翌営業日 翌営業日



メットライフ生命 ネット・アプリ・電話申請

書類申請

着金日 3営業日後 4営業日程度

となります。


保険会社各社も、新型コロナウイルスの影響で貸付制度を利用する人が増えると見込み、特別な対応をしています。

例えば、手続きの際の本人確認書類基準を一部緩和するなど、迅速に契約者の手元にお金を届けられるような工夫をしています。

貸付制度のポイント

貸付制度を利用する際のポイントとして、以下の4点を解説します。


○借りられる金額の限度は?

○返済の方法は?

○返済しないとどうなる?

○返済中に支払い自由が起こったらどうなる?

借りられる限度額は?

生命保険の契約者貸付制度で借りられる額は、契約中の保険によって異なります。一般的には、解約返戻金の70~90%が目安だと言われています。


例えば、解約返戻金が100万円の保険を契約していた場合、70万円~90万円を借りられるということです。


自分の契約がどうなっていて、いくら借りられるかは契約先保険会社にかくにんしてください。インターネットから確認できるサービスを提供している保険会社もあります。

返済の方法は?

返済の方法も、保険会社によって様々です。一般的に多いのが、


○保険会社から送られてくる専用振込用紙を使い、銀行から振り込む方法

○コンビニATMなど、保険会社指定のATMから入金する方法

○専用払込用紙(Pay-easyなど)を使って、銀行・コンビニで払い込む方法

 

などです。


様々な方法があるので、ご自身のライフスタイルに合わせた返済方法を選べます。

返済しないとどうなる?

返済が終わらないまま時がすぎ、元金と利息を合わせた額が解約返戻金を超えてしまうと、保険会社から契約者に対して通知が来ます。

このとき、保険会社から通知された金額をすぐに返済すれば、何も問題はありません。


しかし、この通知がきた後も返済ができずに期日を過ぎた場合は、契約している生命保険自体が失効される可能性があります。


先程も説明しましたが、生命保険は加入時の年齢や体調によって契約できる内容が変わってきます。一度契約が失効されると、以前と同じ条件(月々支払う保険料、保障内容など)で契約することはできないと考えてください。


今の契約を維持し続けるためにも、計画的な返済をしなくてはなりません。


また、支払い期限に関しては、各保険会社ごとに異なります。新型コロナウイルス対策として、期限を延長している保険会社もありますので、ご自身の契約先に確認してください。

返済中に支払事由があるとどうなる?

契約者貸付制度を利用して、返済している最中に支払事由(保険金を支払うべき事象)が起こった場合は、返済額と保険金が相殺されます。


たとえば、


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Aさんが1,000万円の死亡保障付き保険に加入していたとします。


Aさんは新型コロナウイルスの影響を受けて会社が傾き、契約者貸付制度を使って100万円を借りました。その返済をしようとしたところで、Aさんが事故で亡くなりました。


この場合、死亡事故が起こったため、保険会社は保険金受取人に対して1,000万円の支払いをします。しかし、Aさんが借りている100万円と保険金が相殺されるため、実際に保険金受取人が受け取るのは、


1,000万円ー(100万円+利息)


となります。

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保険金は、被保険者に万が一のことがあったとき、家族の生活を守るために必要なものです。保険会社から支払われる額が少なくなってしまった場合、家族の生活に支障をきたすリスクがあります。

小規模企業共済の特例緊急経営安定貸付金

小規模企業共済とは、國の中小企業政策を実際に行う機関として作られた「中小機構」が運営する共済です。

小規模な企業を経営する方が、廃業や退職時の生活資金のために積み立てる「退職金制度」です。


小規模企業共済では、新型コロナウイルスで影響を受け経営難となっている加入者に対して、特例緊急経営安定貸付金という制度を実施しています。


特例貸付金以外にも、掛け金の納付期限延長など様々な特例措置を講じており、資金繰りに困っている加入者にとって、大きなメリットのある制度です。

特例緊急経営安定貸付金とは

小規模企業共済が提供する、特例緊急経営安定貸付金の概要を以下にまとめます。

 

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概要

貸付条件:新型コロナウイルス感染症の影響を受けて業績が悪化し、1ヶ月の売上高が前年(前々年度でも可)と比べて5%以上減少した、貸付資格を有するすべての契約者


借入額:50万円~2,000万円(掛け金総額の70~90%


借入期間:借入額が500万円以下なら4年、505万円以上なら6年


利率:0%(無利子)


担保・保証人:不要

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この貸付金は、今までに支払った掛け金の総額によって借りられる額が変動します。

具体的な額を知りたい場合は、共済から送られてくる「貸付限度額のお知らせ」を確認してください。貸付限度額は、算定基準日における掛け金の残高と、掛け金の納付月数に応じて設定されます。


現在、年に2回(4月と10月)に更新されているので、お知らせを確認する際は、最新の貸付限度額かどいうかを確認してください。


すでに借入をしている場合や、お知らせが手元にない場合は、共済契約者番号を確認し(共済手帳などに記載されています)、コールセンターまで問い合わせてください。問い合わせの際に本人確認をするので、必ず本人が連絡してください。

小規模企業共済が実施する特例措置

小規模企業共済では、貸付制度の他にも特例措置を講じています。

具体的には、以下の3つがあります。

○共済契約者貸付利用者の延滞利子の免除

○掛け金の納付期限の延長

○分割共済金受給者の一括支給対応

それぞれ詳しく解説します。

 

共済契約者貸付利用者の延滞利子の免除

共済契約者貸付を利用した方(特例緊急経営安定貸付とは異なります。)は、申し出れば延滞利子を1年間免除されます。


この制度を利用する条件は、


「令和2年4月時点で契約者貸付の残高があり、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて経営が悪化し、1年間の売上高が前年度または前々年度と比べて5%以上減少した契約者」


です。

掛け金の納付期限の延長

「新型コロナウイルス感染症の影響を受けて業績が悪化し、1ヶ月の売上高が前年(前々年度も可)と比べて5%以上減少した、すべての契約者」

を対象に、


①掛金月額を、1,000円から70,000円までの範囲で自由に選択できる。

②令和2年11月まで掛け金の納付期限を延長できる。

※期間内の支払いが免除されるのではなく、令和2年12月からは2ヶ月分ずつ掛け金を納めなくてはならない。


という2つの特例措置が用意されています。


②の納付期限を延長する、を選んだ場合、延長後の請求額が2倍となるので、負担が大きくなります。利用する際は十分注意をしてください。

分割共済金受給者の一括支給対応

「新型コロナウイルス感染症の影響を受けて業績が悪化し、1ヶ月の売上高が前年(前々年度も可)と比べて5%以上減少した、分割共済金の受給者」

を対象に、


契約者からの申し出があれば、分割共済金の一括支給(繰り上げ支給)を行います。


申請は電話で受け付けています。共済相談室(コールセンター)まで連絡してください。後日、担当者から電話で連絡があります。

資金繰りでお困りなら弊事務所へご相談ください

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて資金繰りで困っているのであれば、弊事務所へご相談ください。


会社再生の経験豊富な弁護士が、御社の状況に合わせた適切なアドバイスを致します。

また、弁護士には銀行をはじめとする金融機関、税理士、社労士の先生などの専門職とのつながりがあります。

法律に関することだけでなく、多角的な面から御社のサポートが可能です。

 

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