【10分で分かる⁉】会社の解散・清算手続きの概要と重要論点

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会社の解散・清算とは?

会社の解散とは、その会社の法人格の消滅を生じさせる原因となる法律行為をいいます。

解散は、法人としての活動を終了するという意思表示を明確に行うことを指し、これにより法律上の主体としての会社が終焉に向かう第一歩となります。

もっとも、解散原因のうち合併以外については、会社の解散によって直ちに法人格が消滅するわけではありません。

実際には、会社は解散後に清算・解散手続きを経て、初めて完全に法律行為の主体である地位を喪失することになります。

つまり、会社の活動を停止させるためには「解散→清算→消滅」という三段階を踏む必要があります。

このように、解散は法人としての活動の終了を意味する一方で、清算はその法人が保有する財産や債務の整理、残余財産の分配などを通じて法人を法的に消滅させるための実務的なプロセスを含んでいます。

清算手続きは、株主・債権者・従業員などの利害関係者の利益を保護し、円満な会社の終了を目指すために極めて重要です。

したがって、会社の解散・清算においては、法律上の手続だけでなく、適切な情報提供、株主総会での決議、関係書類の作成・申請、官報公告や裁判所への届出等、数多くの実務的対応が求められます。

これらの手続を適切に履行することにより、法人の消滅を円滑かつ法律に則って完了させることが可能となります。

会社の解散・清算を行う目的・メリット・デメリット

目的

会社の解散・清算を行う主たる目的は、事業活動の終了に伴う法人の整理です。

経営方針の変更、市場環境の変化、人材や資本の再配置など、会社存続よりも終了を選択した方が合理的な状況では、会社の解散・清算が適切な手段となります。

また、他の事業体への事業譲渡やM&A戦略の一環として、既存の法人を終了させるケースもあります。

加えて、法律上の事由(例:定款に定めた存続期間の満了)や、経営困難に直面した場合に事業の継続を断念する形で、法人を終了させる目的もあります。

メリット

第1に、債務の整理と資産の換価処分による事業の「総決算」が可能になります。

不動産や設備、売掛金、棚卸資産、その他の動産を適切に売却・処分することで、会社の資産全体の整理が可能となり、その結果、清算貸借対照表を通じて最終的な財産状況を正確に把握することができます。

これにより、関係者間の公平な分配や納税義務の明確化など、最終処理が法律に基づいてスムーズに行われるメリットがあります(法人税法第137条、消費税法第45条)。

第2に、事業を終了することで、将来的な経営リスクを遮断できます。

業績不振、債務超過、法的トラブル等を抱えたまま継続するよりも、早期に会社を解散・清算することにより、経営者や株主、従業員にとっての心理的・実務的な負担を軽減することができ、次の事業展開や新しいキャリアを形成するための準備期間を確保することが可能となります。

また、不要なコストの発生を防止し、人的・資本的リソースの有効な再配分を行うことにもつながります。

第3に、税務上の整理を行うことで、法人税や消費税等の最終的な精算処理を明確にし、税務署への適正な申告・納税が完了するため、トラブルの予防にもつながります(国税通則法第19条、第74条の2)。

さらに、清算によって発生する残余財産の分配により、出資者や株主へのリターンが可能となる場合もあり、会社としての責任を果たす意味でも重要です。

また、事業承継の一環として、旧法人の清算を経て新法人を設立し、資産や取引先、従業員を移行することにより、柔軟で計画的な組織再編が実現できます。

デメリット

解散から清算結了に至るまでの手続きには、多数の届出や法定書類の作成・提出が求められ、そのプロセスは複雑で煩雑であるといえます。

たとえば、清算財産目録や清算貸借対照表、株主総会の開催通知、招集通知、議案の説明資料、議事録など、定められた様式や法定期間を遵守しながら手続きを進める必要があります。

これらを適切に進めるためには、各種情報の把握と管理体制の整備が不可欠であり、通常業務と並行して実施することは多大な時間と労力を要します。

また、清算結了後にも書類の保管義務(10年間)が継続し、登記書類や財務関係資料、株主総会関係の書類など、対象資料の範囲が広く、保管体制を整備する必要があります。

さらに、従業員の退職や再就職支援にかかわる事務手続き、未払いの買掛金・借入金に対する対応、株主や債権者との交渉、契約解除の通知など、解散によって生じる周辺業務の事務処理も必要であるため、事務負担が重くなるといえます。

そして、会社の解散・清算を円滑に進めるためには、税理士による税務申告や決算対応、弁護士による契約問題や債権債務の整理・登記手続など、複数の専門家によるサポートが欠かせません。

こうした専門家への依頼には相応の費用を要し、加えて、打ち合わせや確認作業などで担当者の稼動負担も重くなりがちであることもデメリットであるといえるでしょう。

会社の解散・清算と廃業の違い

「廃業」は、一般的に事業活動を終了することを意味し、特に個人事業主が事業を閉じる際によく使われる用語です。

廃業の場合、法人格の消滅という手続きは必要なく、税務署等への届出を行えば比較的簡易に事業の終了が可能です。

そのため、個人事業の「廃業」は、簡素な行政手続きによって完了することが多く、法的義務も限定的です。

一方で、法人の「解散・清算」は、法律に基づいた厳格な手続きが必要となるプロセスです。

会社法をはじめとする関連法令に則り、定款に定められた存続期間の満了や株主総会の特別決議、解散理由の発生等によって会社の解散が決定されます。

解散後は、清算人の選任や登記、債権者に対する公告と通知、財産の換価、負債の弁済、残余財産の分配、清算結了登記といった一連の清算手続きが必要になります。

さらに、法人の解散・清算では、官報への公告や裁判所への申請、登記簿上の変更手続き、複数回にわたる株主総会の開催、関連書類の作成・備置・報告など、法律上の義務が非常に多く課されます。

これらの手続きは、一般的に税理士、弁護士等の専門家の関与を必要とする場面も多く、個人事業主の廃業と比較して、時間、費用、手間が大きく異なるのが実情です。

したがって、廃業と法人の解散・清算は、表面的には同じく「事業をやめる」行為に見えるものの、その法的意味、手続きの内容と規模、必要な書類や期間、関与する機関や専門家の範囲など、根本的に異なるプロセスです。

会社を消滅させるための他の手続き

手続きの選択

会社の消滅には、通常の解散・清算手続き以外にも、さまざまな法律上の手段があります。

これらの手続きは、会社の財務状況や事業戦略、株主構成、債務整理の必要性などによって選択され、状況に応じた柔軟な対応が求められます。

合併

合併は、2つ以上の法人が統合されることで、消滅会社の法人格が終了します。

合併には、吸収合併と新設合併の2種類があり、いずれの場合も、存続会社または新設会社が資産・負債・契約等を包括的に承継することになります。

合併による会社の消滅は、企業再編やグループ内整理、事業承継を目的として選ばれることが多く、取締役会や株主総会での承認、官報公告、債権者保護手続、合併契約書の作成・登記など、多くのステップが伴います。

破産手続き

破産は、会社が支払不能の状態に陥った場合に裁判所に申立てることで開始されます(破産法第18条、第30条)。

破産開始決定により法人は直ちに清算型の手続に入り、破産管財人が選任されて資産の換価と債権者への配当を行います。

破産手続は債権者の公平な保護を目的としており、通常の清算とは異なり裁判所の監督の下で厳格に進行されます。

特に多額の借入金や買掛金が整理できない場合には、法律上破産手続きが適切な対応となります。

特別清算

特別清算は、通常の清算よりも迅速かつ柔軟に会社の整理を行いたい場合に利用される制度であり(会社法第510条〜第518条)、清算人が債権者や裁判所の協力のもとで清算を進める点が特徴です。

特別清算を行うには、裁判所に対して開始の申立てを行い、開始命令(民事訴訟法第24条)を得る必要があります。

特別清算は柔軟な処理が可能ですが、通常の清算よりも一定の要件と手続き的ハードルがあるため、弁護士等の専門家の関与が不可欠です。

会社の継続

一度解散した会社でも、清算手続の進行前であれば、株主総会の特別決議や裁判所の認可を経て会社の継続が認められることがあります。

例えば、事業環境が好転し、清算よりも事業再開が合理的であると判断された場合に選択されます。

会社の継続には、再度取締役や監査役の選任、必要に応じた定款変更や登記手続きが必要であり、関連する法律・登記実務に精通した専門家の支援が推奨されます。

これらの選択肢はいずれも、会社の状況や目的に応じて適切な判断が求められ、事前の情報収集や関係者との協議、専門家への相談を通じて、最善の方法を選ぶことが重要です。

解散手続き

手続きの概観

会社の解散は、法人としての終わりに向けた重要な第一段階であり、株主総会における特別決議(会社法第309条第2項第11号)によって正式に決定されます。

この特別決議は、定款または法律に基づいて所定の議決要件(議決権の3分の2以上の賛成)を満たす必要があり、適法かつ明確な手続きを経て成立させなければなりません。

解散決議後は、取締役が清算人を推薦し、通常は株主総会において清算人を選任する議案が提出され、承認されます(会社法第478条)。

清算人には、元代表取締役や取締役が選ばれるケースが多いですが、外部の司法書士や弁護士など第三者を選任することも可能です。

清算人の選任後、法務局へ登記申請を行い(会社法第915条第1項)、正式に解散と清算の事実が登記簿に記載されることになります。

さらに、清算人の業務が開始されると、会社は新たな事業活動を行うことが法律上制限され、解散前に開始されていた業務の終了処理および債権債務の精算、資産の換価、残余財産の分配などに専念することになります。

このように、解散手続きの開始は、単なる意思表示だけではなく、法的効力を伴う手続きの連続であり、その一つひとつが会社の適法な終了のために極めて重要な意味を持ちます。

解散原因

株式会社は、次の事由により解散します。

存続期間の満了等定款で定めた解散事由の発生(会社法第471条第1号・第2号)

会社が定款でこれを定めた場合には、その期間または解散事由の登記を行うことが必要になります(会社法第911条第3項第4号)。

株主総会決議(会社法第471条第3号)

最も一般的な解散事由であり、株主総会における特別決議によって会社を解散することができます。

経営戦略の見直し、事業の終了、事業譲渡の完了など、会社としての存在理由が終了した場合に行われます。

ただし、特定の業種等においては、特別法により主務大臣の認可が必要となる場合があります(銀行法第37条第1項第3号、保険業法第153条第1項第1号等)。

合併(会社法第471条第4号)

合併において他の法人に吸収される側の会社(消滅会社)は、合併効力発生日をもって自動的に解散します。この場合、清算手続は不要であり、合併によって権利義務が包括的に承継されます。

破産手続開始の決定(会社法第471条第5号)

会社が支払不能の状態に陥った場合、裁判所が破産手続開始を決定すると、その会社は解散したものとみなされます(破産法第30条参照)。以降は破産管財人が選任され、破産法に基づく清算手続きが行われます。

解散命令(会社法第471条第6号、会社法第824条第1項)

法令違反や会社の目的達成不能など、重大な事由があると裁判所が判断した場合、関係者の申立てに基づいて会社に対し解散命令を出すことがあります。これは強制的な解散手続となり、一般にはまれなケースです。

解散判決(会社法第471条第6号、会社法第833条第1項)

解散判決は、次のいずれかの場合において、やむを得ない事由があるときに総株主の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主、または発行済株式の10分の1以上の数の株式を有する株主の請求によりなされます。

  • 会社が業務執行において著しく困難な状況に至り、回復することができない損害が生じ、又は生じる恐れがある場合
  • 会社の財産の管理または処分が著しく失当で、会社の存立を危うくする場合

休眠会社のみなし解散(会社法第472条)

法務局により、長期間登記が行われていない会社は「休眠会社」とみなされ、一定の手続を経て解散扱いとなることがあります。

解散の効果

清算手続きの開始

会社が解散すると、直ちに清算手続きが開始されることになります。

清算人は、会社の財産・債務を整理し、最終的な決算報告を行うための実務を担うことになります。

清算開始は、事業活動から清算業務への移行を法的に意味する重要なタイミングです。

事業活動の廃止

会社は原則として新たな事業活動を行うことができなくなります。

これにより、会社は営利活動から手を引き、過去の契約関係の履行や債権の回収、資産の換価など、清算に必要な処理のみに限定して行動することになります。

新規取引の締結などは原則として禁止されます。

未決の訴訟は清算人が継続

解散時点で係属している裁判手続や訴訟については、清算人が引き継いで対応します。

これには、会社が原告・被告のいずれである場合も含まれます。

清算人は、未決訴訟の進行状況を把握し、必要に応じて代理人を選任するなどして、適切な訴訟対応を行う責務を負います。

一部の機関(取締役会等)の機能喪失

会社の解散後は、従来の機関構成に大きな変更が生じます。

取締役会、監査役会などの業務執行機関は基本的にその機能を停止し、清算人がその権限と責任を一元的に担うことになります。

ただし、清算中も株主総会は必要に応じて開催され、重要事項の決議や報告事項の承認を行います。

解散手続き

取締役会決議

まずは取締役会を開催し、会社解散の方針を決定します。

この時点で、解散総会の開催日や議案の内容、株主への通知方法、必要な添付資料の作成スケジュールなどを詳細に決定します。

また、株主に提供する説明資料(清算理由、財務状況、今後の流れ等)を準備し、情報の透明性を確保します。

株主総会(解散総会)

取締役会の決議に基づき、株主総会を招集します。

ここでは、特別決議によって解散の正式な決定を行います。

株主総会の開催には、定款および会社法の規定に従い、開催通知を法定期間前に発出し、株主名簿の基準日設定や名簿の閉鎖、議事録の作成等が求められます。

議題には清算人の選任や清算方法の概要も含まれる場合があります。

公告・通知

解散決議後は、官報への公告を行うほか、会社の債権者に対して個別通知を行うことが義務付けられています。

公告では、債権の申出期間(通常は2か月以上)を定める必要があり(会社法第499条第1項)、これにより債権者保護手続が開始されます。

また、商業登記法第10条に基づく官報公告の要件を満たすことが求められます。

公告文や通知文の作成にも注意が必要で、記載漏れがあれば手続きが無効となる可能性もあります。

清算人の選任

通常、解散総会の中で清算人を選任する議案も併せて可決されます。

清算人は、通常は代表取締役や取締役が就任しますが、場合によっては倒産法制に精通した弁護士などの外部専門家が就任することもあります。

裁判所への届出

特別清算を選択する場合や、清算人の選任をめぐって紛争が発生した場合など、必要に応じて裁判所へ申立てを行います。

裁判所への届出には、解散理由、株主総会の議事録、登記事項証明書、会社の財務資料等の提出が求められるため、事前に必要書類を正確に把握し、準備する必要があります。

ここでも倒産法制に精通した弁護士によるチェックを受けることが良いでしょう。

清算手続き

会社財産の現況調査

清算人が就任した後、最初に行うべき重要な業務の一つが会社財産の現況調査です。

この調査は、清算手続き全体の基礎となるものであり、資産・負債の全体像を把握するために極めて重要です。

調査対象となる財産には、現金預金、売掛金、不動産、機械設備、備品、在庫商品、未収金、前払費用などの資産項目が含まれます。

また、負債面においても、借入金、買掛金、未払金、未払費用、賞与引当金、退職給付引当金など、すべての債務項目を正確に把握しなければなりません。

これらの情報は、過去の会計帳簿、契約書、請求書、銀行取引明細、固定資産台帳、税務申告書類など、さまざまな一次資料をもとに精査されます。

さらに、係争中の訴訟や未回収の債権なども調査の対象となります。

これらの不確定要素については、将来的な損失の可能性を考慮したうえで、適切な引当を行うなど、清算貸借対照表に反映させる必要があります。

調査結果は、後に作成される清算財産目録および清算貸借対照表の基礎資料となり、株主への報告や裁判所への届け出、債権者への説明においても重要な役割を果たします。

このため、現況調査は正確かつ網羅的に実施しなければならず、場合によっては公認会計士や税理士の協力を仰ぐことが望ましい場面もあります。

債権者対応

債権申出の催告

会社が解散した後、清算人はすみやかに債権者に対して債権の申出を求める「催告」を実施しなければなりません。

この催告は官報に公告する方法で行うことが義務付けられており、加えて判明している債権者に対しては個別に通知を行う必要があります。

債権者は公告または通知を受けてから原則として2週間以上の期間内に債権の申出を行う必要があります。

期間内の弁済禁止

債権申出期間中は、会社は原則として債務の弁済を行うことができません。

これは、すべての債権者を平等に扱うために必要な措置であり、特定の債権者に優先して支払うことを防ぐ法的制度です。

期間満了後に、提出された債権内容を確認し、適法性や支払優先順位等を検討したうえで、弁済を行うことになります。

未到来債務への対応

弁済期が到来していない債務についても、清算の過程で適切に処理しなければなりません。

例えば、長期借入金など今後支払い義務が生じる債務は、債権者との協議や債権額の割引処理(ディスカウント)等を通じて、早期に精算する必要があります。

これにより、清算財産の確定と残余財産の分配がスムーズになります。

除斥された債権者への対応

債権申出期間内に申し出を行わなかった債権者は、法律上その債権を除斥されることが原則です。

ただし、その債権者が除斥された場合でも、会社に残余財産が存在する限り、清算人は任意で支払うことが可能です。

債権者間の公平性や会社の法的リスクを考慮して、倒産法制に詳しい弁護士の助言を受けることが無用なトラブルないし混乱を避けるコツです。

清算財産目録等の作成

作成目的

清算財産目録の作成目的は、会社が保有する資産および負債の全容を網羅的に把握し、清算過程での債務弁済や残余財産の分配の基礎とする点にあります。

この目録は、会社の現時点の経済的状況を可視化し、株主・債権者・裁判所・登記機関に対して透明性のある情報提供を行うための重要資料です。

債権者保護の観点からも、会社が公正・誠実に清算を行っていることの証明となります。

作成時点

清算人が現況調査を終了した時点で、速やかに清算財産目録の作成に着手する必要があります。

実務上は、遅くとも現況調査終了後2週間以内には作成を完了し、監査役の監査および株主総会への提出準備に入るのが望ましいといえます。

作成に遅延が生じると、債権者からの不信感を招き、トラブルの原因になる恐れがあります。

評価基準

資産については市場での換金可能性に基づく「時価」、負債については支払義務のある金額を基準とする「実現価値」によって評価されます。

固定資産や不動産については、公認会計士等による評価が求められることもあります。

帳簿上の金額をそのまま流用するのではなく、清算時点での実態に即した数値とすることが重要です。

様式

清算財産目録は、会社法および会社計算規則に定められた書式に準じて作成する必要があります。

通常は、資産・負債を科目別に分類した一覧表の形式をとり、各項目について金額、内容、評価方法を明記します。

また、補足資料として、目録作成に用いた資料の目録や、評価に関する説明書、財産目録に基づく貸借対照表などを添付することが、株主総会や裁判所での審査を円滑に進める上で効果的です。

清算財産目録の承認総会

開催時期

清算財産目録が作成された後、通常は1か月以内に株主総会を開催して承認を得ます。

この期間は、清算手続きの迅速化を図るとともに、債権者・株主に対する説明責任を果たす意義を有します。

実務上は、監査役による監査を経た後、速やかに招集通知を発出し、スムーズに議事を進行できるように準備することが求められます。

決議方法

清算財産目録の承認は、原則として株主総会における特別決議を要します。

監査役による監査等

清算財産目録は、承認総会前に監査役の監査を受ける必要があります。

監査役は、財産目録の記載内容が正確であるか、評価方法に合理性があるか、また資産と負債の整合性が取れているかなどを監査します。

承認後は、清算財産目録および清算貸借対照表を所定の場所に一定期間備え置き、関係者が閲覧できる状態にしておく必要があります。

清算中の定時株主総会

貸借対照表等の作成・備置・公告・裁判所への届出

清算中の会社は、営業活動を停止しているものの、会社法に基づき定時株主総会を開催する必要があります。

清算期間中における会社の財務状況を示す貸借対照表、損益計算書、清算報告書等を作成します。

これらは、官報公告または日刊新聞紙による公告を行います。

必要な資料の提供、決議、報告

清算中の定時株主総会においては、清算人が会社の状況について説明を行い、前事業年度の報告および財産の管理状況などについて議案を提出します。

株主はこれらの資料に基づき、承認の可否を判断します。

また、清算人が新たに債務の発生や資産の売却、事業譲渡など重要な方針変更を予定している場合には、その旨の報告および承認決議を得ることが良いでしょう。

この総会は、清算手続きの進捗や透明性を株主に共有する場として極めて重要です。

残余財産の分配

分配時期

清算人がすべての債務の弁済を完了し、債権者保護手続が終了した後に行われます。

債務の確定と支払いが完了して初めて、残余の財産が確定し、分配可能となります。

分配に先立ち、必要に応じて最終的な清算貸借対照表の作成・承認が必要です。

分配基準

残余財産の分配は、通常、出資比率(持株比率)に基づいて行われますが、会社の定款に特別な定めがある場合にはそれに従います。

仮に、優先株式などがある場合は、優先順位に従って分配が実施されます。

株主間の紛争防止のためにも、あらかじめ分配基準を明確にし、文書で通知することが望まれます。

分配方法

現金による支払が原則ですが、会社が保有する不動産、在庫商品、什器備品、投資有価証券などの現物による分配(現物分配)も可能です。

ただし、現物分配を行う場合には、資産評価の妥当性や換価性、受領者の納税義務(所得税法第36条、法人税法第22条)等に注意を払う必要があります。

特に不動産を分配する場合は、不動産登記の移転手続きが必要となるため、不動産登記法第3条、第60条に従い、不動産登記の専門家である司法書士を起用することも考えられます。

決算報告総会と清算結了登記

株主総会で決算報告を承認

清算人は、すべての債務弁済および残余財産の分配を完了した後に、清算に関する最終の決算報告書を作成します。

この報告書には、清算期間中の財産管理、債権回収、債務支払い、財産分配の詳細が記載されます。

清算人は、この報告書を株主に提出し、株主総会を開催してその内容について承認を得なければなりません(会社法第499条第3項)。

株主総会において承認が得られると、清算業務は実質的に終了したものといえます。

清算結了登記を行い、法人格が消滅:株主総会において決算報告が承認された後、清算人は速やかに法務局に対して清算結了登記を申請します(会社法第507条)。

この登記によって、会社は法的に完全に消滅し、法人格も失われます。

登記申請には、清算事務完了報告書や株主総会議事録、決算報告書、登記事項証明書などの書類が必要となります。

登記が完了すると、会社は登記簿から閉鎖され、以後の商業登記は不要となります。

書類保管義務(清算結了後10年間。会社法第501条および会社計算規則第120条)

法人格が消滅した後も、会社に関する重要な書類は原則として10年間の保管義務が課されています。

この保管には、帳簿、決算書、株主総会議事録、清算報告書、登記関係書類などが含まれ、第三者からの閲覧請求に備えて適切に管理する必要があります。

保管責任は通常、元清算人またはその後継者が引き継ぎますが、所在や体制についても明確にしておくことが、将来的なトラブルを防ぐ上で重要です。

清算手続きは専門性が高く、法的・実務的知識を必要とします。

倒産法制に詳しい法律専門家としての弁護士の専門家のサポートを受けることで、トラブルの回避や円滑な手続きをすすめることができます。

時間や手間がかかる一方で、適切な知識と段取りがあれば、会社を円満に消滅させることが可能です。

この記事の監修者

弁護士法人i 代表弁護士

黒田 充宏

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