「中小企業円滑化法の期限切れの影響は?」

 1 経緯   

「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(以下「金融円滑化法」といいます。)」は、金融庁は、現下の経済金融情勢において、特に厳しい状況にある中小零細企業の事業主の方々や、住宅ローンの借り手の方々を支援するため、平成21年12月4日に施行されました。当初、平成23年3月末までのものでしたが、その後2度にわたる延長がなされ、最終的に平成25年3月末まで延長しました。
今回期限切れを迎えるにあたり、その期限の再々延長が期待されましたが、それは期待薄のようです。 そこで今回は、金融円滑化法が期限切れを迎えることによって生じる影響を考えていきたいと思います。 

 

 2 影響

 (1)影響    

金融円滑化法が施行されたことで、条件変更の申出(いわゆる「リスケ」)が行いやすくなりました。リスケの申し込みに対して、その実行率(実行/申込)は実に92%以上に登ります。例えば、平成24年3月末における実行率は約92.3%(2893千件/3133千件)であり、この内8割以上が再リスケだと言われています。金融円滑化法利用後倒産の発生件数自体は年々増加基調にあったとはいうものの、金融円滑化法によって実に多くの中小企業が救われていたことが分かります。 
では、金融円滑化法が期限切れを迎えることになれば、倒産事件が急激に増加することになるのでしょうか? 

(2)金融庁の態度    

こうした心配に対して、金融庁は、「円滑化法の期限到来後も、貸し渋り・貸し剥がしの発生や倒産の増加といった事態が生じないよう、引き続き、日常の検査・監督を通じて金融機関に対し、他業態も含め関係金融機関と十分連携を図りながら、貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めるよう促してまいります。」という金融担当大臣の談話としてホームページ上に発表されています。この談話通りに事が運べば倒産の増加という結果はあまり心配ないように思えます。

(3)金融機関の実態   

ただ、実際に融資をしている金融機関の動きがどのようなものなのかを知る必要があります。例えば、大阪市信用金庫と大阪東信用金庫が合併することは皆さんご存じだと思います。平成24年12月20日にはここに大福信用金庫も加わることが発表されました。これらの合併の目的として合併趣意書には「中小企業金融円滑化法の最終年次を迎えるなかで、お取引先が抱える諸問題等について、コンサルティング機能を発揮し、十分な合意形成を図りつつ課題解決を進める必要があ」るためと記されています。
しかし一部報道によれば、金融円滑化法が期限切れを迎えることで、「取引先の経営改善を促して貸出債権を健全化するか、不良債権とみなして貸倒引当金を積み増すか選ぶことにな」り、貸倒引当金を積み増すことになれば、多額の資金が必要となることから「財務体質を強固に」するためだとされています。
この報道からすれば、金融機関は、金融担当大臣の談話とは異なり、再建の見込みがないと判断した中小零細企業を順次切り離していく(=倒産やむなし)と考えているものと思われます。
そうすると、金融円滑化法が期限切れを迎えることで倒産件数は増加するものと推測されます。金融機関自身も、帝国データーバンク社のアンケートに対して、企業倒産は増加することを見込んでいるようです(「やや増加する」58.2%、「現状と変わらない」25.9%、「分からない」14.2%、「大幅に増加する」1.7%)。さらには、金融円滑化法が期限切れを迎えることで、5~6万社が倒産するという見解を発表しているところもあります。

3 今後について

このような金融庁と金融機関の態度を見ていると、金融円滑化法が期限切れとなった際に急激に倒産が増えるということはないかもしれません。しかし中小企業としては、金融機関の態度次第では、資金繰りに窮する可能性がある以上、「要管理先」、「破綻懸念先」、「実質破綻先」、「破綻先」に分類されないように対策を講じることが必要です。
どのように対策すべきか?対策が出来ない場合、どうなるのか?などを次号以降で検討していきたいと思います。
初回相談料0円 お一人で悩まずに、まずはお気軽にご相談ください。 Tel:0120-115-456 受付:月~土9:00~19:00(日・祝応相談) 弁護士法人i 東大阪法律事務所(近鉄大阪線・奈良線・布施駅 徒歩2分)
メールでのお問い合わせ
0120-115-456 受付:月~土9:00~19:00(日・祝応相談) メールでのお問い合わせはこちら