食品製造業における倒産・事業再生の特徴
(1) 事業の特性
食品製造業とは、生ものである原材料を輸入し、食品・飲料の製造を行い製造した製品を販売する業界です。
この事業の特性として、
①消費者の「安全・安心」を守るための取り組みが不可欠であること
②日配品であり、且つ見込み生産で発注すること
③販売価格の下落圧力が強いことが上げられます。
①消費者の「安全・安心」を守るための取り組みが不可欠であること
これは食品製造業者の使命の一つです。過去の食中毒問題(O-157、サルモネラ菌)により消費者の「安全・安心」に対する要求が高まっており、食品製造工程を継続的に監視記録するなど(ハサップといいます )コストがかさむ要因となっています。
②日配品であり、且つ見込み生産で発注すること
一般に要求される受注から納品までのリードタイム5~6時間に比して製造リードタイムは商品によりますが11~13時間であり、この時間差のために見込み生産を行わざるを得ません。
見込み生産のリスクとして廃棄ロスが発生し、コスト高の一因となります。精度の高い受注予測・生産管理が重要となります。
③販売価格の下落圧力が強いこと
近年小売業者が提携する食品製造業者を使い、開発・生産するPB(プライベートブランド)商品の普及により販売価格が引き下げられていることもあり価格が値下げしないと売れない事態となっています。
(2)窮境の原因
上記特性で述べたような小売業者間の熾烈な競争、業界内での過当競争による販売価格下落や原材料費単価の高騰による圧迫に耐えられない企業は窮境に陥ります。
また、一度食品事故が発生すると企業の存続に関わる致命傷になります。
(3)倒産における特徴
もともと工場用不動産、食品製造設備等固定資産が多く計上されていることが多く、この処理(リース品の処理を含めて)問題となります。
代替の効かない設備であることが多く、事業や固定資産を同業他社に売却する等一般の不動産とはことなる配慮が重要となります。
また、棚卸資産としての原材料や商品についても同業者の迅速な協力が得られるかどうかで換金出来るか否かの結論が変わります。
(4)事業再生における特徴
先述した廃棄ロスが最も非効率生産活動になりこれを抑制するための製造リードタイムの短縮、受注予測精度を上げることが収支改善のために重要です。
すなわち、省力化(機械化)によりリードタイムが短縮すればするほど受注生産に近づき廃棄ロスは抑制できる。完全に受注生産は難しいので受注予測精度をあげることで補うことが可能となります。これにより顧客対応力が増せば売上げ増、再投資(機械化)の好循環に入ることが出来ます。
事業再生の多くはスポンサーがつくことが多い(プレパッケージ型民事再生など)がスポンサーがつくかどうかも設備面での充実、立地における運送費の抑制などが重視されます。
自力再生する場合でもメインバンクの着目点としては上記であり、省力化(機械化)できていない企業は自力再生は困難です。
(5)利用できる補助金
食品製造業の事業再生において活用できる可能性のある補助金としては、「中小企業再生支援・事業承継総合支援事業」というものがあります。
こちらは、中小企業者等の円滑な事業承継・引継ぎ促進のため、事業承継診断に基づく支援ニーズの掘り起こしや、事業承継計画の策定、譲渡・譲受事業者間のマッチング等の支援をワンストップで行うものです。
詳細については、中小企業庁のサイトをご確認ください。