業種別倒産・再生の特徴(宿泊業/飲食業)
Contents
宿泊業における倒産・事業再生の特徴
事業の特性
宿泊業はハード面では土地建物に関わる設備投資が先行し、その後の営業によっては投資回収を図っていくビジネスでした。
故に建物の立地想定客層、コンベンションホールや大宴会場・結婚式場などの付帯施設が重要となります。
また、ソフトの面では、顧客満足度が宿泊先決定の重要な要素となり、消費者はネットエージェントによる評価 顧客満足度を容易に把握することができます。
よって、ソフト面も看過できず、エージェントや消費者の評価が選択要因になり売上に重要な影響を及ぼします。
さらに、基本的な稼働は24時間365日稼働しており、接客に相応のトレーニングが必要となるため、多数の従業員それも正社員が必要となる労働集約型の事業です。
窮境の原因
倒産のきっかけとなりうるのはコロナ禍のような突発的な需要の減少がもっとも顕著です。
もともと過大な設備投資が事業の土台となっているため、営業による回収が滞るとたちまち財務状況も悪くなります。
さらに、近年若年層の労働力確保が困難となっており、ホテルに限らず労働集約型の産業においては人手不足倒産という類型も特徴となります。
倒産における特徴
倒産局面での特徴としては遅効性があり、直ちに倒産(不渡り)に至るというより、様々な改善を試みた結果倒産に至るケースが多いです。
また、倒産局面においても元々土地建物など資本を有しており、倒産に至るまでに事業譲渡やM&Aをするか、破産開始決定後も事業譲渡を模索する場合があります。
事業再生における特徴
徹底したリストラが基本となり、省エネ投資による水光熱費削減、飲料原価、消耗品原価低減、最適人員体制への転換をまずは進めることとなります。
また、売上拡大のためにウェブマーケティング強化、インバウンド客への対応強化を進めます。
しかし、風評により容易に客離れしやすい業態でもあるので、資金繰りがつかなくなった状況下での再建は難しいです。
第一段階のリストラの効果を見極めて早めの事業再生を決めなければ事業毀損が進むほどスポンサーがつきにくくなり、ニューマネー注入による再建が難しくなる傾向にあります。
飲食業における倒産・事業再生の特徴
事業の特性
飲食店舗の業績は立地条件によって決定されると言って良いでしょう。商圏に合わない業態の店舗の場合早期の撤退・事業転換が必要になります。
また、業態が多域に渡り業態によって原価や費用構成が大きく異なるので商圏にマッチする業態・店舗であることが成功の条件です。
さらに、特徴として売上に対する材料費比率及び人件費率が高く、統計では原材料比率は約4割、人件費率は約2割5分です。
この点は収益改善を図る上で重要なファクターになります。
窮境の原因
立地条件の善し悪しが大前提となりますが、商圏での競合、商圏と店舗との適合性も重要な要素となります。
また、飲食業は現金商売であり、必要コスト以外のコスト(社会保険、租税公課、元本返済)を停止すると日々の資金繰りに回せるようなるため、このような綱渡りをを継続する企業もあります。
このような企業は突発的な要因に対処できず、また、公租公課の滞納は法的手続きの選択肢を破産に限定することとなってしまいます。
倒産における特徴
倒産局面では、大方の店舗が賃借しているため店舗の明け渡し費用をどうするかが問題となる場合が多いです。
老舗の飲食店でも、経営者はこのコストを予期していないことが多く閉店が決まってからかき集めることも多々あります。
また、業態によっては生鮮品の処分が問題となり、同業種等に買取を依頼することにならざるを得ないことも多いのです。
さらに、雇用する従業員も比較的多数になるため解雇・賃金の生産が可能かどうか、不可能であれば労働福祉機構による未払い賃金立替払い制度を利用するかどうか判断を要します。
逆に、支払いたくても、パート・アルバイト従業員は消息がつかめなくなる従業員も少なからずいるので、連絡先確保等も重要なポイントになります。
事業再生における特徴
複数店舗を抱える企業であれば、不採算店舗の撤退・業態転換・改装による販促が即効性のある収益改善策となります。
また、前述したような原材料費比率のなかでも、フード売上とドリンク売上に分けた場合、ドリンク売上はフード売上に比較して原価率が低く、利幅が大きいためどれだけドリンク売上を増やせるかが収益改善の鍵となっています。
即効性のある収益改善策を講じることが第1ですが、効果が見込めない場合には、事業の売却等を検討しなくてはなりません。
参入障壁が低い業種であるために、事業の特徴が無い限り(顧客であるとか、特徴のあるメニューなど、店舗立地)、事業き損が進めば売却が困難となるか、売却額が著しく低額となる可能性が高いです。
また、飲食業の場合、食品を商品とする以上、利用者の健康等に直接影響を与えることから、企業イメージが直接集客力に影響を与えます。
そのため破産=サービス低下との印象を与えやすく、できるだけ破産を回避すべきです。
ベストチョイスとしては、金融機関だけを対象とする私的整理により、再生を図ることが望ましいと言えるでしょう。
その場合、不採算店舗の閉鎖や不採算事業の撤退が事業再生の鍵を握ります。過去の成功体験に縛られず、大なたを振るえるかどうかが肝となるのです。
回は特に法人の破産や再生の特徴についてご説明しましたが、法人の破産・再生に伴って、個人の破産・再生にも特徴があります。
弊事務所では、奈良という地域に根付いた運営を行っております。奈良の地域産業の構造を理解した上で、債務整理の経験豊富な弁護士が対応致します。
債務整理に関して不安を感じていらっしゃる方にも、安心してご相談いただけるような環境を整えているのです。