印刷業における倒産・事業再生の特徴

事業の特性

印刷業の特徴として、まず設備投資が重要である点が挙げられます。企業が保有する設備によって、商品の種別や、生産の効率などが大きく変化します。

他社との競争を生き残るためには、印刷機や加工機を始めとした機械類の新規購入やメンテナンスが欠かせません。

また、印刷機はその多くが数千万円~数億円と高額なものが多いため、事前に綿密な計画を立てた上で投資を行っていく必要があります。

さらに、印刷業は受注産業です。そのため、受注内容によって商品の特性(形状、大きさ、品質など)が大きく異なり、それらに対応していく必要性があります。

受注産業のメリットとして、他の製造業と比べると在庫を多く抱えづらい点がありますが、エンドユーザーが所属する業界によって季節による繁忙期が違うため、年間の稼働率を一定に保つことが難しい側面もあります。

他業種とくらべて材料費が高いことも特徴の1つです。印刷業の主要な材料費としては、紙やフィルムなどの印刷対象媒体費や、インク代などが含まれます。

これらはいずれも原油価格の相場の影響を受ける費用であり、相場が変動するたびにコストが増えるリスクがあります。

窮境の原因

受注産業であることから、特定の顧客からの注文が売上の大半を占めるケースが多いです。そのため、その特定の顧客の業況が悪化すれば、印刷業者自身も急激に業績悪化に陥る可能性が高いです。

例えば、近年では新型コロナウイルス感染症の影響を受け、旅行産業や飲食業が大きな打撃を受けました。付随して、これらの業界に属する企業からの注文に依存している印刷業者も、売上が激減し、資金繰り悪化に陥りやすいのです。

その他、過剰な設備投資により窮地に陥るケースも少なくありません。印刷業は設備投資によって提供できるサービス内容が大きく変化しますが、投資が過剰であると固定費が増大します。

他にも、人員不足や、紙媒体での印刷物の需要よりもWEBサイトの需要が高まってきたことも、窮境の原因と言えるでしょう。

倒産における特徴

印刷業は、多くの事業所が東京都や大阪府、埼玉県など、大都市に集中する都市型産業です。

よって、倒産時に明渡しをする際に多額の金額がかかる可能性が高いです。

その他にも、印刷業ではインクをはじめとする化学製品を大量に使用します。倒産時にはこれらの処分が必要ですので、産業廃棄物の廃棄に多額の費用がかかります。場合によっては、それらの産業廃棄物が原因で土壌汚染が検出されるケースもあり、原状回復にも費用がかかるリスクがあります。

事業再生における特徴

ア 事業改善計画

印刷業の事業改善としては、

・売上の改善

・コストの削減

・生産性の向上を図る

の3つに取り組むことが非常に重要になってきます。

まずコスト削減としては、印刷業の費用で最も多いのが「材料費、仕入れ高等の変動費」であり、その次に労務費や人件費が続きます。

変動費の削減としては、原紙の費用を下げるため、購買単価の引き下げや歩留まり、予備分の削減することなどが考えられます。

原紙など材料費についで多いのは外注費ですので、この部分の削減も検討する必要があります。

固定費の多くを占めるのが人件費です。近年の市場環境の悪化を考えると、人件費を削減したり、抑制したりすることは不可避です。

人件費の検討に対しては、生産性を向上させ企業体質を改善するだけで持ち直しが可能なのか、リストラなどの手段をもって損益分岐点の低減を図る必要があるか十分に見極めなければなりません。

事業の業況が悪化する局面においては、受注能力を向上させる努力とともに、戦略的な営業活動を行う努力も必要です。

具体的には既存の取引先と、新規ターゲット先を、それぞれが属する業種ごとに分類して行うことを検討しましょう。

自社が持つ生産ラインの特色を踏まえた上で、

・どのエリアの企業か

・どの業種の企業か

・どの商品を

・どうやって売り込むのか

を熟慮する必要があります。

イ 財務改善案

印刷業者の特徴でもありますが、専門的な技術が必要な工程を外注したり、自社工場の稼働状況に応じて外注したりすることが多いです。

事業再生を行うためには、こういった下請け業者の協力が不可欠です。

また、再生手続きを行うと、紙やインク等を仕入れている業者が今後の支払いが滞る可能性を懸念し、現金取引や支払いサイクルの短縮を求めてくる可能性があります。

よって、再生手続きを行う印刷業者は、自社の資金繰りと、仕入れ業者の代替性などを総合的に考慮して、可能な範囲での支払条件を提示することが必要となります。仕入れ業者が複数にわたる場合は、その仕入れ業者間での支払い条件の公平性も考慮すべきでしょう。

既存の顧客への説明、協力の取り付けも重要になります。

再生手続を始めると、当該印刷会社に対する発注が慎重になる顧客がほとんどです。

今後の業務運営に問題がないことをきちんと説明し、継続して受注できるよう説得しなければなりません。必要であれば、今後の再生計画や、支援を受けられることなどを具体的に説明して納得してもらうとよいでしょう。

その他、印刷機械に譲渡担保権を設定していたり、印刷機器をリースで借りていたり、所有権留保特約付き割賦販売で取得していたりする場合がありますので、当てはまる場合には注意する必要もあります。

利用できる補助金

印刷業の事業再生において活用できる可能性のある補助金としては、「中小企業再生支援・事業承継総合支援事業」というものがあります。

こちらは、中小企業者等の円滑な事業承継・引継ぎ促進のため、事業承継診断に基づく支援ニーズの掘り起こしや、事業承継計画の策定、譲渡・譲受事業者間のマッチング等の支援をワンストップで行うものです。

詳細については、中小企業庁のサイトをご確認ください。

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